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2016.5.16 コラム一覧に戻る
【最近の医療過誤判例から】A
【最近の医療過誤判例から】A
                                               弁護士 内橋一郎

1. 歯科(東京地判H27年7月9日=判タ1422−308、控訴)
≪ケース≫
 歯科の患者が歯科医院に対し、歯科手術を受けた際、歯科医師が歯科用タービンを患者の口腔底に接触させ、その後、受傷部位の縫合を行ったことにつき、縫合の際に誤って、左側顎下腺管を巻き込んで縫合した注意義務違反等により患者の顎下腺管が狭窄し、唾液の分泌量が減ったとして損害賠償請求したケース
≪争点≫
(1) 狭窄の有無
(2) 注意義務違反の有無
(3) 因果関係が認められる損害
≪裁判所の判断≫
(1) 狭窄の有無
MRI画像では、患者の右顎下腺管内にある唾液は径の太さを大きくさせないまま顎の正中付近まで伸びているのに対し、左側顎下にある唾液は途中で棍棒状に拡張・途絶しており、かつその下流側(開口部側)では極端極細い高信号の線として描写され、高信号の線の太さが著しく変化している部位で左側顎下腺管が狭窄していると考えるのが合理的である。
(2) 注意義務違反の有無
口腔内の切削に伴って縫合措置をする場合、顎下腺管を巻き込んで縫合してしまう可能性があることは歯科医師も認めるところであり、そのような顎下腺管の走行位置に鑑みれば、歯科医師は、口腔内を縫合処理する際には、顎下腺管の走行を意識した上で縫合針を可能な限り、浅く刺入して縫合を行うべき義務があるところ、歯科医師は縫合措置に関する過失がある。
(3) 因果関係が認められる損害
唾液量が減少する原因には、唾液線管の狭窄のほかに、加齢や降圧剤の服用等があり、本件事故により原告の唾液流失量が一定程度減少したことは認められるものの、現在の唾液量の減少やそれに基づく口腔内の乾燥が全て、本件事故によるものとはいえない。

2. 産婦人科(大阪地判H26年10月21日=判時2287&#821278、控訴)
≪ケース≫
 出産婦Aの出産時の当直医師には、切迫早産の可能性があることを踏まえ、超低体重児に対して適切な措置を施すべく、新生児専門医の待機や来院を要請すべき注義務があるのにこれを怠り、適切な蘇生措置が遅れた結果、新生児が低酸素脳症による脳性まひになったとして損害賠償したケース。
≪争点≫
(1) 新生児専門医の待機を要請し、かつ新生児専門医の来院を要請する義務について
(2) 出生した新生児に対し、気管挿管して、陽圧換気をする義務について
≪裁判所の判断≫
(1)(裁判所の認定した事実によれば)医師は午後1時15分のAの来院後、Aの状況を
確認したB看護師からの連絡を受け、速やかにAを診察し、直ちにZ病院に新生児
専門医の派遣を要請したものであり、その時刻が11時15分であった。従って、11
時10分の時点で新生児専門医の来院要請することは困難であり、その時点で来意に
要請する義務はなく、注意義務違反はない。
(2) 医師は出生から約20分間、その呼吸管理をB看護師に委ねているが、医師は分娩後の処置として、胎盤の娩出や子宮の圧迫止血等をしていたものであり、出血量が800mlと多量であったことから、その措置に時間を要したことが認められ、医師が出産後の母体の安全を優先したことはやむを得ないことと認められ、Aの措置が終わるまで対応をB看護師に委ねたことが医学的相当性を欠くとはいえない。
(3) 医師は、午後11時55分以降の時点でも、Aに気管挿管をしていないが、間もなく、新生児専門医が到着するが予測されたこと、超低体重児に対する気管挿管は熟練が必要であり、経験がなければ失敗のリスクがあり、仮に挿管を失敗して期間を損傷し出血すると視野が悪くなり、専門医による挿管が困難になること、午前0頃に専門医が到着し、気管挿管による陽圧換気及びサーファンクタントの投与の措置がとられたこと等から、午後11時55分の時点で気管挿管しなかったことが医学的相当性を欠くとはいえない。            

以上

弁護士内橋一郎
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