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2016.11.16
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秋本番
「秋本番」
弁護士 内橋一郎
1. 暑かった夏も終わり、ようやく秋になった。
以前は、旅行や全国規模の研究会等の特別な事情がない限り、週末も仕事や原稿書き等をしていたが、それを続けていると、ここ数年、週の途中で息切れ(集中力低下)するので、最近は、週末はなるべく休むようにはしている。
2. 10月下旬の週末は、布引の滝を散策した。貯水池あたりまでだが、坂を上っていくと、すこし汗ばむ。
登る途中に布引の滝をうたった句碑がポツポツとあるので、句碑刻まれた句を眺めつつ、読み人や当時に思いをはせて、登っていく。ゆっくりしたペースなので、六甲山登山される方やトレーニングなのか走って登っていく方が追い越していく。
神戸のいいところのひとつは街と山が近いところで、どこでも、すこし歩けば、山(森)に入る。すこし歩けば、空気がかわってくる。森のいいにおいがしてくる。
貯水池付近で引き返すが、山の上の方は少し紅葉が始まっている。
お昼頃には切り上げ、北野あたりまでおりてランチ。
なにをしたわけでもないが、こういうときのビールはばかることもなく、休日だなという気分になる。
3. その次の週末は長男と奈良に行った。
出かけた時間が遅めだったので、この日は、近鉄奈良駅の周辺のみ。
まず興福寺。北円堂を参拝し、国宝館へ。
阿修羅像は相も変わらず美しく、迦楼羅像ら八部衆立像も趣があり、いずれも興味深い。
近くでお昼をすませて、東大寺へ。
大仏殿周辺は人でごったがえしており、それをさけて、二月堂、三月堂へ。
お天気もよく、二月堂から眺める風景は、気持ちがいい。
三月堂の仏像も素晴らしい。不空検索観音像を中心に、梵天、帝釈天、そして四隅を四天王が守護する。
その後、奈良公園を通って駅方面に向かう。
富雄にあったアコルドゥが依水園近くにリニューアルオープンするらしい。依水園周辺を借景とする戸建てのレストランとの話。
自宅に戻ってからは、しばし仏教と仏像談義。
4. 11月に入って母の入居しているケアハウスに母に会いに行く。
老々介護で、両親二人でなんとか田舎暮らしをしてくれていたが、今年6月に父が亡くなった。大きな家に母一人というのも心配なので、地元のケアハウスに入所させてもらった。
ぼくの実家も相当な田舎だが、ケアハウスのあるのはそこからさらに奥まった山間
にある。
神戸からだと、西行き新快速で三宮から約35分。それから支線の汽車(ディーゼ
ルカー)に乗り換えて50分。さらにバスに乗り換え30分。
時間に余裕をもって家を出るので、支線への乗換駅では、出発時間まですこし時間がある。そこで、途中下車して穴子飯を買い求めたり、あるいは神戸で購入してきたサンドウィッチとかお弁当で、早めの昼食を駅のベンチでとる。
ケアハウスにつくのは1時過ぎ。1時のバスの後の帰りのバスは5時過ぎ。
バス停の西側にはきれいな川が流れ、桜並木。季節には蛍が出るらしい。
道路を挟んで田圃があり、集落がある。集落から坂道をすこし上ったところに母が住むケアハウスがある。
道路の左と右には山。紅葉が始まり出していた。
帰りのバスまで4時間ある。必然、母の部屋で話をする。父のこと、むかしの思い出話。同級生のこと、古い写真を眺めて、笑ったり、懐かしがったり。
帰り道、坂道を下るところに古い神社があったので、母や家族の安全安泰を祈る。
5. その翌週、母が転倒して、肋骨を折った(ひびが入った)という連絡がある。
来なくていいというが、どういう状態はわからないので、2週続けて訪問。
思ったより元気そうではあったが、痛みがあるときはかなり痛いようだ。
山々はもうすっかり紅葉していた。バス停横に植えられた、真っ赤な紅葉が目に染みるように印象的だった。
行きはとてもいいお天気であったが、帰りのバスが来る時間には日が落ち、肌寒いほど。
道路端に立って、乗客がいますよとバスに手を挙げると、バスの運転手さんがライトを点滅する。この時間(午後5時)、このバス停から終点まで乗客は、いつも、ぼくひとり。バスは、宮崎駿の「トトロ」のバスのようだ。
バスを降り、また汽車に乗り換え、自宅につくのは8時近くになる。
6. 秋本番と書いたが、今年も残すところ、ひと月あまり。もう晩秋といっても過言でもないようにもおもう。
今年は父がなくなったり、いろいろなことがあった。
こうやって、季節が深まり、一年がそして人生が一日一日と過ぎていくのだろう。
ぼくも、自身の人生で言えば秋の季節かもしれない。
でも、ここはひとつ、みのりの秋といきたいものだ。
以上
弁護士内橋一郎
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