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2020.3.23 コラム一覧に戻る
医療過誤訴訟勉強帳D 〜前医と後医の医療上の過失競合と因果関係 (福岡地判R1年6月21日:判時2428−118)
弁護士 内橋 一郎

1.  事案の概要
・  原告は大学病院心療内科を受診したが、心療内科医師は、頭部CT検査報告書の、中枢性神経細胞腫が疑われる旨の記載を見逃し、その後通院したものの、脳腫瘍に対する治療は行われなかった。
・ 5年後、症状が悪化し、大学病院を受診したところ、水頭症を合併した中枢性神
 経細胞腫と診断され、脳腫瘍は大幅に増大していた。
・  その後、別の脳神経外科医院で脳腫瘍摘出術を受けたが、記銘力障害を中心とする認知機能障害等の後遺障害が残存した。
・  大学病院側は、脳腫瘍を放置した過失は認めたものの、記銘力障害は別の脳神経外科医院で手術を受けた際の執刀医の過失で脳弓が損傷したことが原因であるとして、過失と後遺障害との因果関係を争った。

2.  裁判所の判断
・  記銘力障害を主とした認知機能障害の原因として考えられるのは、脳腫瘍及びこれによって発症した水頭症と脳外科手術の合併症及び合併症として続発した水頭症である。
・  本件過失がなければ、原告は定期的な経過観察によって、早期に脳腫瘍の増大を発見し、本件手術よりも早期に腫瘍摘出術を受けることができた。そして本件過失により腫瘍が大幅に増大するまで放置された結果、本件手術の危険度は格段に高くなり、術後の水頭症のリスクも増大したことからすれば、早期に腫瘍摘出術を受けていれば、症状の発生を防止することができた蓋然性が高いものと認められる。

3.  備忘メモ
・  裁判所は、放置(過失)による、腫瘍の大幅増大が、手術の危険度を大きくし、後医の過失に影響したとして、因果関係を認めた。
・  判例時報解説によると、前医と後医の医療上の過失が競合した場合に、因果関係が否定(遮断)されないとした裁判例として、大阪地判H16年1月21日(判時1907−85)、福岡高判H18年7月13日(判タ1227−303)がある。
                                

以上

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