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2020/6/1 コラム一覧に戻る
改正相続法と配偶者保護〜配偶者居住権の創設
弁護士 内橋一郎

改正相続法と配偶者保護〜配偶者居住権の創設

本年4月から、生存配偶者の保護の見地から創設された“配偶者居住権”の制度がスタートしています。以下ではその概要を紹介します。
1.  配偶者居住権(長期居住権)
(1)  夫婦の一方(かりに夫とします)が亡くなった場合、他方(かりに妻とします。生存配偶者といいます)はそれまで住んできた住居に住み続けたいと思うことが多いと思われます。配偶者居住権は改正相続法が一定の要件のもと、その住居において無償で生活できる権利を認めたものです。
(2)  配偶者居住権が認められるためには、被相続人(亡くなった方、前の例では夫)の名義の建物に、生存配偶者である妻が、相続開始時(夫が亡くなった時点)において、居住していたことが前提となります。
そのうえで、@生存配偶者は相続人ですが他の相続人(たとえば被相続人の子)との間の遺産分割協議で配偶者居住権を認める協議が出来ている場合、A被相続人の遺言にその旨の記載がある場合(遺贈)、B家庭裁判所の審判で認められた場合に、配偶者居住権が認められます。
居住建物は夫の単独所有でもまた妻の共有でもいいですが、夫が他の人と共有していた場合には認められません。夫が亡くなった時点で妻は既に高齢者施設に入所しており居住建物に居住していなかった場合(入所が一時的なものでなければ)認められないとされています。
遺産分割協議で配偶者居住権を認める協議がある場合や遺言にその旨の記載がある場合以外は配偶者居住権の取得を希望する旨の審判を申し立てる必要がありますが、審判にも要件があって、居住建物の所有者(たとえば被相続人の子がその建物を相続したような場合)の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生存を維持するために特に必要があると認めるときとされています。
(3)  生存配偶者(たとえば妻)は、居住していた建物全体について配偶者居住権を取得します。
賃料を支払う必要はなく無償でそこに住むことができます。
しかし、居住建物の増改築や第三者への賃貸については建物所有者の承諾が必要です。
 居住期間は、遺産分割協議で特別に決めている場合や遺言に定めがある場合を除いて、配偶者の終身の間とされています。
 配偶者居住権は生存配偶者自身が居住する権利ですので、譲渡することはできず、また所有者に対し買い取り請求することもできないとされています(話し合いにより協議ができれば対価を支払ってもらえることもありますが当然にそれを要求することはできず、配偶者の希望する価格での買い取りが可能であるとは言えません)。
 固定資産税の支払い等通常の必要費は配偶者が、台風等により大規模修繕が必要になった場合の特別な必要費は建物所有者が負担するとされています。
 配偶者居住権を登記すれば第三者に対抗することもできます。生存配偶者は所有者に対し配偶者居住権の設定登記を求めることができます。
(4)  配偶者居住権は生存配偶者が死亡した場合、居住建物が滅失した場合などは消滅します。配偶者は、善管注意義務、用法遵守義務に従って居住建物を使用しなければならず、その義務違反がある場合には所有者は相当の期間を定めて是正の催告をし、その期間内に是正がされない場合は配偶者居住権の消滅請求をすることができるとされています。

2.  配偶者短期居住権
(1)  配偶者短期居住権は、配偶者が、被相続人の財産に属した建物に、相続開始時、無償で居住していた場合に当然に成立する権利で、被相続人死亡後の、生存配偶者の当面の従前の居住建物への居住継続を保護する制度です。
 配偶者居住権(長期居住権)のように、被相続人の意思表示等は必要ではなく、また被相続人と同居しているか否かは要件とされていません。
(2)  配偶者短期居住権は、@居住建物について、配偶者を含む共同相続人間で遺産分割すべき場合は遺産分割により居住建物の帰属が確定した日まで(ただし相続開始時から6カ月は存続する)、Aそれ以外の場合、建物取得者による消滅の申し入れから6カ月迄であり、最低相続開始時から6カ月は居住建物に居住することができることになっています。

3. 、配偶者居住権の概要を紹介しました。配偶者保護といっても、たとえば審判申立の要件など限定的な枠組みになっている部分もあり、制度趣旨を生かした弾力的な運用等の実務的な努力も必要のように思われます。
                                                                     

以上

弁護士内橋一郎
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