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2005.07.11 コラム一覧に戻る
悪質リフォーム被害と高齢者保護@
1,  高齢者を主なターゲットにした悪質リフォームが多発化し、社会問題となっている。 
本年6月30日、家の基礎にひびが入っているなどと称して床下等に不要なリフォームを施し、市価の5倍もの請求をした業者が詐欺と特定商取引法違反(不実告知)で逮捕された。このリフォーム会社は34都道府県にわたり、約5400人から実に114億円の荒稼ぎを行っていたが、被害者の6割以上が60才以上であった。
   この種被害は近時多発化し、国民生活センターによれば、相談は2000年が6045件、01年が7246件、02年が9146件、03件が9567件、04件が8736件で、うち「判断不十分者契約」が2000年から順次、140件(00年)、202件(01年)、290件(02年)、407件(03年)、376件(04年)となっている。ここに「判断不十分者契約」とは身体・精神・知能の障害や高齢がゆえの障害等何らかの理由によって十分な判断ができない者の契約の場合をいう。
   悪質リフォーム案件は、兵庫県下でも、明石市で、72才の男性に天井や床下に換気扇を29台設置するなどして、680万円を請求していた例があった。また神戸市内では、アンテナが曲がっているので直してあげると言って近づき、次から次に、ここを直さなければ前の工事が無駄になる等と称して、不要なリフォームを行い、建坪20坪程度の家の補修工事に数千万円の工事代金を請求していた例もあった。
   被害者が認知症のケースばかりでなく、それに至らないまでも高齢により判断力不足となっている高齢者に乗じるケース、あるいは断り切れない高齢者の心理に乗じるケースも多く存在する。
   またこの種被害は被害者本人が被害に気が付いていないケースもあり、また高齢者の場合、気が付いても自尊心や子供にしかられることをおそれて問題にしたがらないケースもあるため、被害が顕在化しないこともある。
   断り切れない高齢者につけ込み、不要なリフォームを行い、高額な工事代金請求を行って、高齢者の大切な老後資金を奪い取る悪質リフォーム業者は到底許されるものではない。上記のとおり、警察も悪質業者に対しては逮捕等摘発を行い、また経済産業省も行政処分を受けた業者名を公表、内閣府は介護ヘルパー、民生委員向けの消費者問題講座の開催、厚労省は成年後見制度の相談窓口を設置等行政も対策に乗り出した。
   悪質リフォームには近付かない、断る、契約しないのが無論、賢明であるが、既にリフォームを行い、被害を受けた高齢者等の被害が多数存在するので、その救済は重要である。以下では既に悪質リフォーム業者に工事を依頼して工事代金を支払ってしまった高齢者等が拠出した資金を回収する手段について、特定商取引法の規定を中心に検討したい。
2,  詐欺・不実告知等と取消
(1)  悪質リフォームをはっきり「詐欺」と断じることができるケースでは詐欺による契約取消が可能である(民法96条1項)。上記の逮捕事案では刑事上の詐欺により立件が可能となったが、詐欺取消は詐欺の故意の立証が必要であるため、その立証は必ずしも容易ではないとされている。
(2)  この点、特定商取引法は、故意を要件としない「不実告知」の場合にも取消権を認めた(同法9条の2第1項1号、6条1項)が、悪質リフォーム業者は高齢者等に狙いを付け、高齢者の自宅を突然、訪問し、不意打ち的に勧誘を行う形態であり、特定商取引法の「訪問販売」に該当するので、特定商取引法の規定の適用がある。
    すなわち、事業者は勧誘をするに際し、または申込の撤回もしくは解除を妨げるため、商品の種類、性能・品質等契約に関する事項で消費者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものについて、不実のことを告げる行為をしてはならない(6条1項)が、消費者がこれを事実と誤信した場合にはその意思表示を取消すことができる(9条の2第1項1号)。
   「不実告知」とは事実と異なることを告げる行為で、例えばシロアリ駆除業者が、シロアリがいないにもかかわらず、シロアリに侵されていて、このままでは家が倒れてしまうと告げる場合は不実告知に該当する。
   勧誘するために不実告知を用いる場合だけでなく、「申込の撤回もしくは解除を妨げるため」、すなわちクーリングオフを妨げる場合に用いる場合にも適用される。個人的な都合によるクーリングオフは認められない等と言う場合がそれにあたる。
(3)  また「事実不告知」の場合、すなわち業者が不都合な事実について意図的に黙っていて契約を締結させたり、契約解除権の行使を妨げる行為(6条2項)により、消費者が告げられなかった事実が存在しないと誤認した場合には意思表示を取消すことができる(9条の2第1項2号)。
   例えば、床下換気扇の販売業者がその住居には3台設置すれば十分なのに、適正な設置台数については何もふれずに20台分の販売契約書を差し出し、消費者が20台を適正だと信じた場合にはその意思表示を取り消すことが可能になる。
(4)  取消の意思表示は、消費者が誤認に気が付いた時から6ヶ月以内、契約の時から5年以内に行わなければならない(9条の2第4項)。
契約を取り消した場合、契約は遡って無効となり、相互に債務の履行が終わっている場合には不当利得の規定に基づき、受け取った代金や商品等を返還することになる。リフォーム工事が既に終わり、代金が支払われている場合でも、本来、工事代金の返還が可能であるが、この場合、消費者は一応、リフォーム工事が行われ、それなりの利益が消費者側に現存するため、その分の調整(代金返還額の減額)が必要になるとも考えられる。
   しかし、第1に利得があると言えるには、リフォーム工事により以前よりも良くなったと言える場合であって、リフォーム工事がなされたとしても、何らの改善がない場合、あるいは以前よりも悪化した場合には利得がないと考えるべきである。
   第2に仮に何らかの改善が認められたとしても、例えば不実告知があり、不実告知がなければそのようなリフォームはしなかった場合、その利得は「押しつけられた利得」であるから、返還する必要がないと考えることも可能である(少なくとも返還額の大幅な減額が必要である)。
   第3に、仮に消費者側からの返還が必要だとしても、その場合の利益の返還は市価を基準にしたものに止まらなくてはならない。
   いずれにせよ、リフォーム工事の内容につき、建築士による調査が必要であろう。

以上

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