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2005.10.26 コラム一覧に戻る
MRSA感染症をめぐる医療過誤訴訟の現況についてB
8,平成10年6月30日山口地裁判決(判例時報1687号108頁、控訴)

  原告は平成4年4月15日、A病院において、双胎の第一子として重症新生児仮死の状態で出生し、出生直後、自発呼吸が一時停止したことから、同日、相手方病院(山口日赤)NICUに入院した。Y病院で低出生体重児及び重症仮死と診断されました。
  4月26日から28日まで点滴刺入部に軽度の発赤又は腫脹が現れ、同月28日に左足背部に発赤及び化膿疹があるが、胸部・腹部に異常はなく、哺乳量も増量傾向にあった。30日、哺乳に時間がかかるようになり、5月1日、CRPが2・1となった。2日、CRPは6・5まで上昇し、この日からビクシリン、クラフォランを投与するが、CRP10・5に上昇。同日、血液培養の結果、グラム陽性菌が多数との報告を受ける(なお、4月22日、咽頭からMRSAが検出されている)。4日、CRP8・7、5日4・1、6日4・8と続き、6日、右大腿部腫脹を認める。2日の血液及び膿の各細菌培養検査の結果、MRSA陽性と判明。整形外科で化膿性股関節炎に罹患されていると診断され、福岡市立こども病院で緊急手術が施行されたのですが、右足に大腿骨中枢部骨端線の障害が残ることになりました。
  判決は、5月1日には何らかの感染症に罹患しているものの、MRSAが起因菌の1つとまでは特定されていなかったのであるから、抗生剤としては新生児細菌感染症として頻度の高い細菌をカバーすることができる組み合わせが相当であり、ビクシリン、クラフィランが最適であるが、2日のビクシリン、クラフォランの投与にもかかわらず、3日はCRPが上昇したこと、血液培養の結果からグラム陽性菌が多いとの報告を受けていること、新生児細菌感染の原因菌としてはB群レンサ球菌、大腸菌等腸内細菌群、ブドウ球菌が重要であること、MRSAもブドウ球菌に分類されること、4月22日、原告の咽頭からMRSAが検出されていること、感染防御機能低下(早産、低出生体重、仮死)等から3日の時点では起因菌の1つとしてMRSAの可能性を予見できたとしました。本件ではビクシリン、クラフォランの投与は1日、抗MRSA薬剤の投与は3日遅いのであって、原因菌が判明するまでは経験的な治療が許されるが、耐性菌と判明した場合には薬剤感受性に従った抗生剤を選択する必要があるとしました。

9,平成10年4月24日大阪地裁判決(判例時報1689号109頁、確定)

  狭心症のため、冠状動脈バイパス手術及び左心室瘤除去術を受けた患者がMRSA感染症、腎不全で死亡した場合に、医師に手術の実施及び術後に過失があったとされた事例です。
  判決は、心臓外科手術を受けた者はMRSAに対する易感染性患者で特に重点的なMRSA対策が必要であること、当該病院では軽度でも感染症の所見が緊急の場合を除いてMRSA感染の有無を確認し、感染が判明すればこれが治癒された後でないと侵襲の大きい手術を行わない原則が確立していたこと、本件手術は緊急性の高いものではなかったこと、本件患者には手術直前からMRSA感染症によるものと疑われる上気道炎の臨床所見があったことから、医師としては手術に先立ち、術前症状、検査結果を確認し、感染が判明すればこれを治癒した上で手術を実施すべきであり、かつ術後のMRSA感染増悪を当然予見し、抗MRSA剤を投与すべき注意義務があったとしました。

10,平成8年4月22日高松地裁(判例タイムス939号217頁、控訴)

  帯状疱疹に対してカテーテルを挿入留置する持続的硬膜外麻酔法後に硬膜外膿瘍を発症して下肢機能全廃等をきたしたという事案につき、担当医にカテーテル挿入部位の皮膚管理が不十分で細菌感染を招いた過失があったとされた事例です。
  判決は、カテーテル先端に不透明膿様物質が付着しており、その培養検査の結果、黄色ブドウ球菌が検出され、原告の起因菌と一致したこと、カテーテルの挿入部位と硬膜外膿瘍の発症部位が一致していることから、カテーテル感染とした。そして、原告外出時にカテーテル挿入部位のテガダームやガーゼが剥がれてカテーテルが露出し、最近が侵入する危険性が高い状態に置かれていたこと、患者外出時の注意や露出時に細菌汚染防止策のために配慮が十分ではなかったとして、病院に過失を認めました。

(内橋一郎)

以上

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