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2005.10.26 コラム一覧に戻る
MRSA感染症をめぐる医療過誤訴訟の現況について@
1, 『MRSA』とは、ペニシリン系抗生物質であるメチシリンに耐性ある黄色ブドウ球菌のことで、病院で第三世代セフェム系が多用された結果、薬剤耐性が誘導され、耐性を持つMRSAが蔓延するようになりました。
  病気を治療にいったはずの病院でMRSAに感染して、敗血症などを発症し、亡くなったり、あるいは化膿性関節炎などの重篤な後遺症を残すことになったのですから、患者や家族は納得できません。そこで、MRSAをめぐる訴訟が多発しました。争点としては@MRSAに感染させたことを病院の過失と考えるもの、AMRSA感染後の診断と治療が不適切であったことを過失と考えるものに大別されます。
  しかし、MRSAをめぐる訴訟で患者側はなかなか勝訴できませんでした。ところが、平成8年〜10年頃から、少し流れが変わりだし、勝訴判決が増えてきたように思われます。
  以下ではMRSA感染症をめぐる最近の判例状況(患者側勝訴判決)を簡単にまとめました。

2,札幌地裁平成17年10月4日判決

  これは最近の報道によるものですので、詳細は分かりませんが、MRSAに感染させたことを病院の責任を認めるもののようです。
すなわち2001年5月29日、当時、74才の男性が札幌市内の幌南病院で膵臓ガンの摘出手術を受けたのですが、患部の縫合が不完全であったため、患部から大量に出血しました。6月には膵臓を摘出したのですが、MRSAに感染し、7月30日に多臓器不全で死亡しました。判決は、MRSAに感染したのは患部の縫合不全が原因として1800万円の損害賠償を認めました。

3,平成15年10月7日東京地裁判決(判例タイムス1172号253頁、控訴)

  Xは平成8年7月12日、Y大学付属病院で帝王切開を受け、双子を出産したのですが、その後、ARDS、DIC、MOFに陥り、7月18日、心停止したことにより、低酸素脳症を発症し、精神知能障害、四肢・体幹機能障害という後遺症が残りました。X、夫、子は、Xが心停止に陥った原因は、MRSAを原因菌とする敗血症に罹患したからであり、Yが適切な時期にバンコマイシンを投与すべき義務を怠った過失があるとして損害賠償請求を求めました。
  判決は、(A)Yにおける「細菌培養検査」につき、@7月10日11時50分に羊水が採取されていること、羊水の分離培養に48時間を要したことから12日(金)午後には分離培養は完了していたこと、AYの自動細菌システムを利用すると菌同定に要する時間は3時間〜10時間、感受性試験は3時間〜10時間とされていることから、13日(土)9時から作業を開始していれば28時間後の14日(日)午後1時には感受性結果の判定結果を出すことが可能であったのであり、B15日(月)9時には担当医に渡すことが可能であり、15日午前中にはXの原因菌がMRSAであると知り得たとし、(B)7月13日から15日午後7時にかけて断続的に高熱、CRP値の上昇、呼吸機能、肝機能及び腎機能の軽度の低下等感染症を疑わせる症状が見られたのであるから、(C)15日午後7時にはそれらの症状がMRSAによるものであり、直ちにMRSAの治療を開始しなければ重篤な結果となることを認識し得たので、この時点で治療を開始する義務があったとしたのでした。

4,平成13年12月19日大阪地裁堺支部判決(webzine第4号、確定)

  原告が持続硬膜外ブロックにより治療を受けるため、Y総合病院入院中、硬膜外カテーテルを経由して(カテーテルからMRSAが検出)MRSAに感染し、硬膜外腫瘍を発生し、第3ないし第5腰椎の椎弓切除術、ヘルニア摘出術、持続洗浄術を受けざるを得なくなったことについて損害賠償請求を求めた事案です。
  判決は、硬膜外カテーテルに接続された持続注入器の使用方法が取扱説明書において1回限りの使用の後、廃棄されなければならないとされているにもかかわらず、6回もの再使用を繰り返したことを認定し、このような方法では滅菌が不十分になり、感染原因となった可能性が高く、かかる使用方法は感染防止義務に違反するとしました。

以上

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