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2006.02.20 コラム一覧に戻る
ライブドア・外為証拠金取引・未公開株
1, ライブドアに対し強制捜査が入り、証券取引法違反の疑いで、堀江社長等が逮捕・勾留され、そして起訴されました。この間にライブドアの株価は100円を割り込み、事件発覚後半月で7分の1、04年1月の高値と比較すると20分の1までに下落したそうです。
  投資については自己責任の原則ということが言われますが、ライブドア株を買った人たちも自己責任なのでしょうか。
  報道によれば、ライブドアマーケッティングの株価をつり上げる目的で、支配下にある投資事業組合が既に傘下に収めていた出版社を株式交換で買収するとの「虚偽情報を公表」したとして、「偽計取引」、「風説の流布」の疑いが持たれているとのことです。株価を高騰させる目的で、将来実現するかもしれないことを既に実現した事実として公表したことが「風説の流布」にあたるとされた判例がありますが、今回は既に傘下に収めている会社をこれから買収するとした点が虚偽情報ということのようです。また交換目的で発行した新株を投資事業組合が売却し、売却利益の大半がライブドアに環流し、利益に不正計上され、04年9月期決算を粉飾したとして、「有価証券報告書の虚偽記載」の容疑も持たれています。
  投資家は、投資した会社の経営リスクに対して投資をするのであるから、その負担については覚悟すべきであるとしても、有価証券報告書の虚偽記載から生じる不利益をも甘受すべき立場にはなく、有価証券の虚偽記載によって損害を被った時は不法行為の一般原則に従って有価証券の発行者に対し損害賠償請求できるとされています(神崎外「証券取引法」373頁)。証券取引法も、有価証券報告書の虚偽記載の公表がなされた時は公表日1年以内に有価証券を取得し、公表日に引き続き所有する者については会社が公表した前後1ヶ月平均の株価の差を損害と推定する規定をおいています(証券取引法21条の2)。
  しかし、一般論として上記のように言えるとしても、ライブドアのやってきたことがそもそも証券取引法に違反するのかどうかについては事実の確定が必要になるでしょうし、またこの場合に証券取引法21条の2の規定が使えるかどうか、使えないとすると、どのような要件のもとで、どのような救済が可能かどうかはさらに検討が必要になってくると思われます。

2、 外為証拠金取引〜相次ぐ行政処分(業務停止命令)と破産
  金融自由化ということで外国為替証拠金取引が無規制なまま放置された結果、平成15年から16年頃にかけて悪質業者による外国為替証拠金取引の被害が激増しました。
  外国為替証拠金取引は、外為を対象とする証拠金取引で、商品先物取引以上にハイリスクな取引ですが、無規制なまま放置された結果、いかさま業者がたくさん参入し、外貨預金との区別が付かないような人たちを主なターゲットとして多数の被害を生み出しました。被害者には主婦や高齢者が殊に多かったようです。
  あまりにひどい状態が続いたので、平成16年秋、金融先物取引法の改正で、登録制、不招請勧誘(顧客が勧誘の要請をしていないにもかかわらず、業者が訪問・電話することは許されないこと)、再勧誘禁止、断定的判断提供禁止、書面交付義務、適合性原則、外務員登録、自己資本比率(120%)等の規制が行われました。
  金融先物取引法は平成17年7月から施行されたのですが、経過措置で12月まで営業を許したため、この間にも不当な勧誘が行われ、被害が出ました。
  金融庁はこのような悪質業者に対し、平成17年、次々と行政処分(業務停止命令)を課していったのですが、そのような業者の多くが破産申立をしました。
  業者が破産してしまうと、損害賠償請求をしようにも、破産配当はわずかです。そうなると、取締役や外務員個人に対する損害賠償をするしかないのですが、住所等が不明であったり、返済資力に乏しかったりすることが多いので、救済はやはり容易ではありません。
  外為証拠金取引金についても、倒産の場合のセーフティネットが必要になると思われます。

3, 未公開株取引
  未公開株取引とは上場されていない株式ですが、例えば昨年頃から「Aという会社が今年の秋に東証マザーズに上場される、今なら1株30万円であるが、上場されれば初値で1株80万円以上の値が付く」と言って勧誘され購入したものの、上場予定はなく騙されたという被害が多数発生しました。先日、Wという無登録業者がアース製薬未公開株を販売したとして、逮捕されたことが報道されていましたが、昨年中にも金融庁、日本証券業協会、東証などで未公開株については警戒するよう呼びかけていました。
  このような無登録業者は、電話勧誘して資料を送付したり、自社のホームページを開設してみたり、雑誌に社長の対談記事を載せてみたりして顧客を信用させるのですが、上場予定はない株式を上場予定で、上場された時は高値がつくと嘘を言って販売するわけですから、悪徳商法というよりも刑事上の詐欺に該当します。また無登録業者が有価証券を販売することは証券取引法にも違反します。
  このような業者には外国為替証拠金取引をやっていた連中がシフトしているとも言われており、外国為替証拠金取引の被害者に、「失った資金を取り戻すいいチャンスだ」と言って勧誘したケースもあるようです。未公開株詐欺は、株式ブームを背景したものですが、つくづく、悪い奴は金の集まるところに集まるものだと思います。
  未公開株の売買自体が禁止されているわけではなく、上場予定のない株式をあると嘘を言って販売する行為が許されないのですが、既に述べたように、証券取引法上、営業として取引できるのは登録業者だけですので、金融庁のホームページ等で登録業者かどうかを確認することが必要です。そして、騙された時は迅速な対応が必要になります。そのような業者は逃げられてしまえば被害回復は著しく困難になります。また逮捕されても同様だと思います。騙されたと気付いた時は直ちに弁護士に依頼することが賢明で、即時に、仮差押、内容証明、訴状、刑事告訴の準備等迅速な対応をすることが必要になると思われます。

4, よく犯罪は社会をうつす鏡であると言われますが、消費者被害も同様のように思われます。今回取り上げたライブドア・外為証拠金取引・未公開株はいずれも現在の社会状況を反映しています。
  このような投資被害、消費者被害を防止するためには、「やり得」を許さないことが必要であり、刑事的・行政的には摘発と処分、民事的には被害回復が重要になると考えます。

(内橋一郎)

以上

弁護士内橋一郎
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