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2007.08.06 コラム一覧に戻る
MRSA感染症に関する新判例@
1,平成17年10月26日のコラム「MRSA感染症をめぐる医療過誤訴訟の現況」で、MRSA感染症に関する重要な医療過誤訴訟をまとめました。
 その後、MRSA感染症に関して、平成18年1月27日最高裁判決、平成19年6月1日神戸地裁判決がありましたので、この2つの裁判例について紹介します。

2,平成18年1月27日最高裁判決
(1)事案の概要
 @平成4年11月3日、81才の女性が脳梗塞を発症して入院。同年12月末頃から38度台の発熱。1月10日まで抗生剤ケフラールを投与。A11日になっても37〜38度台の熱が続き、下痢症状が認められ、7日に採取した喀痰から黄色ブドウ球菌が検出。第3世代セフェム系のエポセリンに変更し、18日迄投与。B15日になっても38度台の熱があり、15日〜26日迄ビブラマイシンを追加。C25日、尿から緑のう菌が検出。2月13日迄第3世代セフェム系のスルペラゾンを追加投与。D一時的に熱が下がったが、1月28日、再び熱が上昇。29日〜2月18日迄ホスホマイシンを追加投与。E2月1日、1月28日に採取した喀痰からMRSAが検出され、また2月1日に採取した便からもMRSAが検出。同日〜同月21日ミノマイシン、同月26日迄バクタを追加投与。F同月初旬頃、熱は下がったが、同月13日、熱が37度台に上昇。同月11日以降MRSAは喀痰から検出されなかったが、便からは検出された。18日、ホスホマイシン中止、23日、ミノマイシン中止。G24日、熱が上昇。26日、バクタ中止。H3月1日以降も発熱。MRSAと緑のう菌を検出。同月4日から18日迄アミカシン投与。15日以降、アミカシン増量、17日〜22日迄バクタを追加。I3月18日になって、バンコマイシンを投与(28日迄)、18日〜26日迄ホスミシンを追加投与、アミカシン中止。Jその後、ホシミシンに代えてバクタを投与。バンコマイシン中止、ミノマイシン追加、リファジン追加、ペントシリン・トブラシン追加、バンコマイシン再度追加等多数の抗生剤を使用。Kその後も数種類の抗生剤の投与を繰り返したが、8月31日、多臓器不全により死亡するところとなった。

(2)患者の遺族は、(ア)第3世代セフェム系のエポセリンやスルペラゾンを投与すべきではないのに投与した、(イ)MRSA感染症が発症した平成4年2月1日頃にバンコマイシンを投与すべきであった、(ウ)多種類の抗生剤を投与すべきではなかったのにこれをしたという過失により患者を死亡させたとして損害賠償を求めました。
 最高裁は、上記の3つの論点について判示しているのですが、このうちMRSA(バンコマイシンの不使用)に関する(イ)の論点について紹介します。
 この点につき、東京高等裁判所は、2月1日、バンコマイシンを投与していない点につき、H鑑定書(北里大学医学部教授・感染症学)が、安易なバンコマイシンの使用はバンコマイシンに対する耐性菌を生み出し、その後の耐性菌に対する治療が深刻な問題になる危険をはらんでいるとした上で、ミノマイシンとバクタによっても、時間を要したものの、患者の便からMRSAが消失したという臨床経過が認められるのであるから、医師の措置が不適切であったとまでは断定できないなどとして、バンコマイシンを投与していない点を過失があるということはできないとしました。
 これに対し、最高裁は、H鑑定書に原審が引用した部分がH鑑定書の中のごく一部でしかいないとして、そのような部分のみに依拠した原審の認定は経験則または採証法則に反するとし、(他の論点も含めて全体として)、原判決を破棄し、原審に差し戻しました。
 すなわちH鑑定書には、@「(患者は)高齢でかつ基礎疾患に脳梗塞があるため寝たきりの状態であること、1月28日の喀痰からMRSAが出ていること、1月15日から下痢が続いていることからMRSA腸炎の存在を念頭に置く必要がある。2月3日に2月1日に検査した糞便からMRSAが証明された時点でバンコマイシンの経口投与を開始することの是非が検討されるべきであると考える」、「理論的にはバクタはバンコマイシンに比べて腸管からの吸収が良いことから、腸管のMRSAに対しての効果はバンコマイシンほどではなく、第一選択薬はバンコマイシンである」、A「2月3日に便からMRSAが検出されていることが判明し、下痢が続いていた時点でMRSA感染症と判断してバンコマイシンを使用していれば、今回の臨床経過に比して早く便からMRSAが消失していたと予想される」、B「2月に抗MRSA薬を開始していれば結果は異なった可能性はある」、「その後、MRSAの定着が抑制されていれば死亡という最悪の結果は避けられたことも考えられる」とあり、2月1日頃の時点でのバンコマイシンを投与しなかったことが当時の医療水準にかなうものではないという趣旨(と理解される)の記載があるとして原審が引用した部分がH鑑定書の中のごく一部でしかいないとして、そのような部分のみに依拠した原審の認定は経験則または採証法則に反するとしました。

以上

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