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2008.01.08 コラム一覧に戻る
先物取引被害と過失相殺
1, 話しはすこし古くなるのですが、平成18年秋、共著で『先物取引被害と過失相殺』(民事法研究会)という本を出版しました。
  平成15年夏頃から、平田元秀弁護士(姫路)、大植伸弁護士(広島)、加藤進一郎弁護士(京都)とはじめたアンドリュー・M・パーディック氏の『証券取引勧誘の法規制』の輪読会がきっかけとなり、その後、土居由佳弁護士(姫路)が加わって、先物取引被害と過失相殺に関する研究会を3ヶ月の1回の頻度で続けてきました。『先物取引被害と過失相殺』はそのような研究会の成果物です。
  私たちが、先物取引被害と過失相殺に関する研究会を始めたのは、先物取引被害救済に取り組むわたしたち原告側弁護士は、過失相殺の適用について、判決を書く立場にある裁判官との間に、少なからぬギャップを感じていたからです。
  先物取引被害に関する判決の過失相殺率の平均値は不明ですが、3〜6割程度のものが多いのではないかと言われてきました。先物取引被害事案では「過失相殺率5割でスタートする」とする裁判官も少なくなかったようです。
  これに対して、被害者側で先物取引被害救済に取り組む弁護士の多くは「原則として過失相殺なしからスタートする」、「過失相殺をするとしてもせいぜい1〜3割が適当」と考えていました。
  そこのところのギャップを埋め、先物取引被害における過失相殺を適切な方向に向けたいという考えから研究会を始め、各地から集まって議論をしてきました。
  『先物取引被害と過失相殺』でわたしたちが企図したことは、先物取引被害の実態を少しでも明らかにすること、過失相殺に関する錯綜した議論を整理し、そのエッセンスを抽出すること、判例で多用される過失相殺の理由を整理し、これに対して反論を試みること、大幅な過失相殺を規制するツールとして信認義務というコンセプトの導入を図ること、近時の心理学的研究成果を過失相殺論に反映させることでした。

2, 「先物取引裁判例集」に掲載されている平成10年以降の判決で、過失相殺の適用を否定した例は41ありますが、そのうち平成18年と同19年に言い渡されたものだけで20例あります。また平成19年に言い渡された過失相殺否定判例で、裁判例集に掲載が間に合わなかったものは私が知る限りで、2例ありますから、平成10年以降の10年間に獲得された過失相殺否定判例の半数以上がここ2年間に言い渡されたことになります。
  また過失相殺されたものでも、その相殺率は小さくなっているように見えます。
  過失相殺の適用状況は、確実に好転し、前進しているように思われます。
  全国の、先物取引被害救済に取り組む弁護士たちが、先物取引被害における過失相殺適用の是非や相殺率減少に向けて、裁判官に論争を仕掛け、裁判所の理解を得てきたことの成果だと思います。
  『先物取引被害と過失相殺』が過失相殺否定や相殺比率の減少にすこしでも役に立つことができれば、このうえなく嬉しいです。

3, さて、過失相殺を否定した最近の裁判例から、2つの裁判例を紹介します。
   1つは、大阪高裁平成18年9月15日判決です。
   「過失相殺は、本来文字とおり過失のある当事者同士の損害の公平な分担調整のための法制度であり、元来故意の不法行為の場合にはなじまないものというべきである。なぜなら、故意の不法行為は加害者が悪意をもって一方的に被害者に対して仕掛けるものであり、根本的に被害者に生じた痛みをともに分け合うための基礎を欠く上、取引的不法行為における加害者の故意は通常、被害者の落ち度或いは弱み、不意、不用意、不注意、未熟、無能、無知、愚昧等に向けられ、それらにつけ込むものであるから、被害者が加害者の思惑とおりに落ち度等を示したからといって、これをもって被害者の過失と評価し、被害者の加害者に対する損害賠償から被害者の落ち度等相当分を減額することになれば、加害者としては被害者の落ち度等を指摘しさえすれば必ず不法行為の成果をその分確保することができることになるが、そのような事態を容認することは結果として不法行為のやり得を保証するに等しく、故意の不法行為を助長、支援、奨励するにも似て、明らかに正義と法の精神に反するからである。したがって、故意の不法行為の場合、特段の事情がない限り、被害者の落ち度等を過失とすることは許されない」(裁判例集45−87〜88)。
  もうひとつは、大阪地裁平成18年10月19日判決です。
  「原告従業員らによる被告に対する本件取引についての勧誘及び受託には重大な違法があったことは明らかであり、しかもそれによって、原告はわずか4ヶ月足らずで600万円を超える手数料収入を得たのであるから、本件取引は、原告従業員らが被告の無知、無経験に乗じて本件取引について断定的判断の提供等の違法行為を行い、それによって原告が著しく過大な利益を得たものといえ、暴利行為として公序良俗に反するとの評価がされると同時に、本件取引については原告従業員らによる被告に対する故意の詐欺的取引と同視することが容易に可能である。そして、そのような場合には加害者である原告従業員らによる詐欺的行為(例えば適合性原則違反や断定的判断提供といった行為)は、被害者である被告の過失を導くことに向けられていると考えられるのであって、そのような場合まで過失相殺をすることは、損害の公平な分担という過失相殺の理念に照らしても許されないと言うべきである」(裁判例集46−241)。
  2つの判決とも、惚れ惚れするような、素晴らしい判決です。
  このような素晴らしい判決を書いた裁判官の意識の高さを高く評価するとともに、判決の獲得に向けた弁護士の努力に対し心から敬意を払います。

4, 私自身も、昨年(平成19年)は、過失相殺なし判決を3件得ることができました(神戸地裁平成19年3月20日判決、神戸地裁尼崎支部同年9月26日判決、神戸地裁同年12月27日判決。3件とも他の弁護士とともに共同受任したものです)。
  過失相殺の適用は、むろん事案(委託者の属性や取引内容等)によって異なるものですが、今年も、少しでも良い成果を上げることができればといいなと考えています。

(平成20年1月7日 内橋一郎)

以上

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