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2008.05.12 コラム一覧に戻る
先物被害訴訟のストラテジーF 先物取引被害と慰謝料
《平成20年3月28日 第59回先物取引被害全国研究会(山形大会)での講演から》

慰謝料の認定理由
 5番目のテーマは,「先物取引被害と慰謝料」です。
 国内公設市場の先物取引被害事件で慰謝料賠償が認められた最近の判決を拾ってみましたところ6つありました。
 目に付いたところだけを拾ったので,抜けているところがあるとは思いますが,神戸地裁判決が5つあって,なぜか神戸地裁ばかりが集まってしまいました。神戸はすごくいいところなので,冷静な裁判官も神戸に来ると情が厚くなるではないかと思っています(笑)。
 慰謝料の認定理由を,最初の神戸地裁平成15年5月22日の例から拾っていきますと,サラ金から借り入れをさせられたということと,自殺を考えるまでに思い悩んでいたということを慰謝料認定の事由にしています。
 2番目の大阪地裁(平成18年2月15日)では,預金のほとんどを失ってしまった。退職金まで失うことになったということを認定事由にしています。
 3番目の判決(神戸地裁平成18年12月20日判決)は本件に現れた一切の事情を総合考慮としか言っておらず,ちょっとよくわかりません。
 4番目の判決(神戸地裁平成19年1月19日判決)は,一つはやはり老後資金を失ったということ,それから,そのことが原因で,家庭不和にまで追い込まれたということを言っています。
 ただ,同じ裁判官の判決で,4番目の判決(平成19年1月19日)よりも,1カ月前の平成18年12月19日の判決では,それも同じように老後資金を失った事案ですが,「すべて賠償されてなお償うことのできない,補うことのできない無形的,財産的損害が生じたとは認めがたい」として,慰謝料を否定しています。すると,ここでやはり重要なのは,家庭不和になったということが,ファクターとして考慮されたのかもしれないと思います。
 それから5番目の判決(神戸地裁平成19年9月19日判決)は,「極度の不安を感じて,睡眠薬に頼らなければ眠れないような状態になった」ということを慰謝料の認定事由にしてします。担当した弁護士の判決報告で神経内科に通ったという診断書ないし診察券を証拠として提出したということを聞いたように思います。
 6番目(神戸地裁平成19年12月27日判決)は,やはり消費者金融からの借り入れ事案です。20万円ですから,消費者金融の利息分にしかならない慰謝料ですけれども,一応慰謝料として認められました。

立証上の工夫
 この慰謝料が認められた事案の慰謝料事由というのは,たしかに個々の事案について言えば,大変なことで,辛いことではあるのですが,われわれ,先物事件を多数取り扱っている弁護士からすれば,しばしば認められるところではないかと思います。
 すなわち慰謝料が認められたケースと認められないケースとの間にはそれほど大きな(あるいは本質的な)差異はないように思えます(それだけ先物被害事件は酷い事件が多いということだと思います)。
 そうだとするならば,慰謝料認容は,無理だと最初から,あきらめないで,こつこつ立証していけば,認容されることもあるのかもしれないと思います。
 5番目のケースでは資料(診断書等)を証拠として出したということでした。
 あるいは1番目や6番目のケースのように,サラ金の借り入れの返済がどれだけ大変だったかということを,書証を提出するなり,あるいは尋問のなかで丁寧に聞いていくとか,そういうことが必要かもしれません。
 もう一つ言えることは,過失相殺率が概して低いことから,かなり悪質事案ではなかったかと推測されます。我が国では懲罰的賠償は認められてはいませんが,慰謝料が認められているケースについて言えば,悪質事案であって,ある意味,懲罰的な意味合いもあると言えなくないという気がします。
 それが慰謝料についてのところです。

(内橋一郎)

以上

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