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2008.12.26 コラム一覧に戻る
08年を振り返って(下)
1,フランチャイズ法
 フランチャイズ法の分野では、競業避止義務をめぐる事件を担当しました。
 あるFCチェーンのフランチャイジーはFCチェーンの創生期から加入しており、店舗経営にあたっては独自性が認められてきたのですが、加盟するジーの数が増え、FCチェーンの規模が大きくなってくると、ザーからの統一性の要求が強くなってきました。ジーとザーとの間で話し合いをしたのですが、経営に対する考え方の違いを解消することができず、袂を分かつことになりました。
 しかし、FC契約書には、FCチェーン離脱後の競業を禁止する条項があり、ザーはジーに対する営業禁止の仮処分等を求め、裁判所に提訴しました。競業避止義務の効力・範囲については議論があるところですが、本件でも競業避止義務をめぐって双方から激しい攻防がありました。私は、ジーの側の代理人として訴訟を担当することになったのですが、会社の存亡がかかった裁判です。順調にいっている会社を絶対につぶすわけにはいかないとの不退転の決意で、事件にのぞみました。最終的には、ジーがザーに対し、一定の解決金を支払う等の内容で袂を分かつという趣旨の和解が成立しました(4月)。
 痛み分けといったところですが、これも1つの大人の解決であったと考えています。

2,保険法
 保険法の分野では、無保険車による交通事故のために後遺症を受けた方の依頼による人身傷害補償保険金及び無保険車傷害保険金請求事件、落下事故に関する保険金請求事件、高齢者の風呂場での溺水事故に関する傷害保険金請求事件を担当しました。
 人身傷害補償保険金及び無保険車傷害保険金請求事件は、後遺障害の内容・程度(等級)や無保険車傷害保険の担保する範囲などが問題になるケースでしたが、よりよい成果を上げることができました(12月)。
 落下事故に関する保険金請求事件は、保険事故の偶然性や自殺免責条項が問題になる案件で、落下事故が偶然と言えるか、あるいは自殺といえるかどうかが争点です。保険会社2社に対して提訴したのですが、1社からは、再検討の結果保険金を支払う旨の回答がありました(12月)。もう1社とはこれから訴訟が始まります。
 高齢者の風呂場での溺水事故に関する傷害保険金請求事件については、このコラムでも何度か取り上げたことがありますが、保険事故の外来性に関して、平成19年7月6日及び同年10月19日と最高裁判決が相次いでおり、外来性の立証責任をめぐる議論はなお続くように思われます。

3,一般民事事件
 同居していた親族が、本人に無断で実印や印鑑署名を使って、震災直後に本人名義で地方自治体から災害援助資金の借入をし、その後、10年近く経過した後に地方自治体が名義本人に返還請求したという案件を担当しました。ご本人は、名義を勝手に使われたのであって、自分は関知していない、筆跡も異なると言って反論したのですが、聞き入れてもらえず、被告として訴えられました。一審は07年1月に勝訴。その控訴審判決が、08年3月にあり、やはり勝訴しました(確定)。勝ってあたりまえの事件です。ですが本人の実印や印鑑証明が使われておりますので、冒用された事実をこちらが証明する必要があります。また10年近く前のことですから、細かな事実についてあれこれ言われても、忘れてしまったことや勘違いしていること等もあり、うまく(完璧には)説明できない部分もないわけではありません。自分が関与してないということを完璧に証明することはそう簡単なことではありませんでした。映画『それでもボクはやっていない』の民事版のようなはなしで、名義冒用された被害者なのに、なんでこんなことで苦労しなければならないのかとご本人と話しあったものです。
 株主優待券の権利行使に関し、1万0500円の支払を求めるという訴訟を提起し、一審(簡裁)は勝訴(07年11月)したものの、控訴審(地裁)では逆転敗訴(08年4月)し、上告(高裁)するも叶いませんでした(11月上告棄却)。株主優待券に関する裁判は珍しいようで、高裁の裁判官は、30数年裁判官をしているが、株主優待券に関する裁判は初めてだと話されていました。興味深い論点を含むものでしたが、残念ながら新判例の誕生にはなりませんでした。
 その他本年も、いろいろな事件を担当してきましたが、そのなかから、思いつくままに書いてみました。   

4,講演、出版、判例誌掲載
(1) 3月、山形で開催された第59回先物取引被害全国研究会では、先物取引被害救済に取り組む弁護士約300名の前で講演いたしました。先物取引被害救済に取り組む専門家ばかりの前での講演であり、自分よりも経験豊かな先輩も沢山おられるなかでの講演は自分には荷が重いと感じられたのですが、勧めもあり、お引き受け致しました。幸いにも、多くの弁護士から、実務的でとてもわかりやすくて、ためになったと好評でした。
 そして、そのときの講演録を『先物取引被害研究・実務編』(先物取引被害研究の別冊)として10月、出版して頂きました。 
(2) 08年、07年に獲得した裁判例の中から、3つの判例が『判例時報』に掲載されました。
 外国為替取引業者と顧客との預託金返還をめぐる和解契約について、業者の行政処分、倒産、預託金の返還可能性という不確実な事項につき断定的判断の提供があったとして、消費者契約法による、和解契約の取消が認められた事例(大阪高裁平成19年4月27日判決)が、平成20年2月1日号(1987号)に掲載されました。
 新生児がMRSAに感染し、化膿性関節炎により脚長差、膝関節の可動域制限等の後遺障害が残った場合に、担当医師に感染治療上の過失があったとして、病院側の過失が認められた事例(神戸地裁平成19年6月1日判決)が、5月21日号(1998号)に掲載されました。
 髄膜腫摘出手術の際、医師が内頸動脈付近まで腫瘍を摘出しようとしたため、内頚動脈の内側部から出血し、患者に重篤な後遺障害が残った場合、同医師に過失があるとして、病院側の過失が認められた事例(神戸地裁平成19年8月31日判決)は、11月11日号(2015号)に掲載されました。

5,09年に向けて
 08年の仕事を各分野ごとに振り返ってみました。
 冒頭で、08年は大変な年でしたが、頑張って、相応の結果を引き出せ、手応えを感じることができた年であったと書きました。実際こうやって振り返ってみると、ここでは書けない案件や書けない事情なども思い起こされ、やはり大変だったなと、再度実感しました。
 今世界中が大変なことになっています。世界中が揺らいでいます。
 これから世界はどんな方向に向かっているのか、09年はどんな年になるのか、みんなが不安を抱えています。出口の見えないトンネルに入ったという方もおられます。
 でもいつかは必ずトンネルを抜けるはずです。それまではぐっと踏ん張って、大変だったけど、頑張っていてよかったねといえるような、そんな年に、できればしたいなと思います。
 そして、こういう時でも、否こういう時だからこそ、「一歩前に出る」心を失わないでチャレンジしていきたいとも思います。
 09年もよろしくお願いいたします。
                           
(内橋一郎)

以上

弁護士内橋一郎
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