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2009.01.06 コラム一覧に戻る
新しい保険法と契約者保護・消費者保護
1, 新しい保険法が平成20年5月30日に成立し6月6日に公布されました(公布から2年以内に施行されます。施行日は政令で定められます)。
 新しい保険法は、100年以上前に制定された保険法(商法)を現代化するために制定されましたが、その改正の重要なポイントの1つとして、契約者の保護があります。
 以下では、新しい保険法が、契約者保護のために整備した規定を見てみたいと思います。

2,告知義務
(1)質問応答義務へ
 保険に加入する際には契約者、被保険者は、病歴等の重要な自己情報の告知が求められます(告知義務)。保険会社からすれば、引き受ける危険がどのようなものがわからなければ、危険を引き受けるかどうか、引き受けるとしてもどの程度の対価にするかの判断ができないからです。
 以前の商法の規定では、契約者等の側で「重要な事実」を告知する建前になっていました。しかし、保険の専門家ではない契約者等が保険の引受に必要な重要事項を自ら判断して告知することは容易ではありません。場合によっては重要な事実の告知がなかったとして契約を解除されてしまうこともないわけではなく、それでは契約者保護に欠けることになってしまいます。
 そこで新しい保険法は、保険会社側が重要な事項を指定して契約者等に質問して、それに契約者等が回答する形で告知を行う(質問応答義務)にしました(4条、37条、66条)。
(2)告知妨害、不告知教唆
 契約者等が故意また重大な過失により重要な事実を告知しなかった場合には保険会社側は契約を解除することができます。しかし、保険会社の営業の人が、自分の成績を上げるために、契約者等に告知をしなくてもいいと言って告知させなかったということがしばしばあったようです。そんな場合にも解除されてしまうのでは困ってしまいます。
 そこで新しい保険法は、そのような場合には保険会社側から解除できないとしました(28条2項2号・3号、55条2項2号・3号、84条2項2号・3号)。

3,保険給付の履行期
 保険は困った事態が起きた場合に備えてかけておくものですから、保険事故が発生し、お金が必要になった場合にはすぐに支払ってもらうのが望ましいことはいうまでもありません。他方保険会社からすれば、事故の内容、損害の有無や額、免責事由を確認し調査した上でなければ支払えないというのもわかります。しかし、確認や調査が口実だけであったり、あるいは確認や調査にダラダラと時間をかけ、保険金の支払いが遅れることは許されることではありません。
 そこで、新しい保険法は、確認や調査は「相当の期間」内に行うことにし、相当の期間を経過した後は保険会社側が遅滞の責任を負うことにして、保険会社側に合理的な期間内に確認・調査をさせ、契約者側の迅速な支払いへの期待を保護しようとしました(21条1項2項、52条1項2項、81条1項2項)。

4,片面的強行法規 
 法律の規定には、契約、約款で法律の規定と異なる定めをした場合に、契約、約款が法律に優先して適用される任意規定と、異なる規定をした場合には無効になる強行規定があります。
 以前の商法の規定は基本的には任意規定でしたが、新しい保険法は、法律よりも契約者等(被保険者、受取人)に不利な内容の約款を無効とする、「片面的強行規定」を多く設けています。例えば、既に述べた告知義務(7条)、保険給付の履行期(26条)などがそれです。これにより、保険契約を締結する場合に約款に合意するしかない契約者等を保護しようとするものです。

5,まとめ
新しい保険法が契約者保護を強化したとされる重要ポイントをご紹介しました。 
 保険契約における契約者保護は、新しい保険法の規定だけで図られるものではなく、消費者契約法の適用や金融商品取引法の準用等も、契約者保護、消費者保護の見地からは重要です。
 例えば任意規定でも契約者が消費者の場合は消費者契約法(10条)により、保険法の規定よりも契約者の権利を制限又は契約者の義務を加重し、信義則に違反し消費者の利益を一方的に害するものは無効になります。
 また変額保険・年金、解約返戻金変動型保険・年金、外貨建て保険・年金に係る契約については、金融商品取引法の行為規制(書面交付義務、クーリングオフ、適合性原則等)が保険業法300条の2によって準用されます。
 消費者契約法、金融商品取引法、保険法などの法律は、21世紀になって以降に成立施行されたものです。
 「新しい酒は新しい革袋に盛れ」といいますが、これらの新しい法律を上手に使いこなし、妥当な結論につなげることが我々実務家に期待・要請される課題であると考えます。

【参考文献】
 萩本修編著「新しい保険法」
 ジュリスト1364号「新しい保険法」
 同1368号「保険法現代化」
 竹濱修「新保険法と消費者保護」(「現代消費法」1号p101)


(内橋一郎)

以上

弁護士内橋一郎
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