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2009.05.19 コラム一覧に戻る
介護事故判例の現況とその読み方について@ (内橋一郎)
1,介護事故と介護過誤
(1) 介護事故とは、介護現場における事故をいうものと考えられます。
介護事故という場合、特別養護老人ホーム、老人保健施設、有料老人ホーム、グループホーム、ショートステイ、デイケアなど被介護者の自宅以外の場所での事故を思い浮かべますが、ヘルパーが被介護者の自宅を訪問して行う訪問介護でも介護事故は発生します。まさに介護の現場で発生している介護に関連する事故全般を総称するものと理解できます。
事故のタイプとしては、転倒・転落や誤嚥・誤薬が多いのですが、利用者同士のトラブル、無断外出、火傷、感染などもあります。
 事故の原因も多様で、利用者(被介護者)自身の動静、介護者の行為(作為、不作為)、物的設備、環境等が事故の発生に関係します。

(2) 介護現場での介護事故予防の実践−『あるべき介護』に向けた努力
 利用者(被介護者)自身が高齢のため身体的・精神的能力の低下していることが少なくないのですから、介護事故の発生は、ある意味、不可避とも言えます。
高齢者は立位能、歩行能が低下するため、転倒の頻度が高く、日常的によく見られるところです。統計によると、65才以上の3人に1人が毎年転倒し、75才以上になると急激に転倒頻度が上昇しているとのことです(眞野行生編『高齢者の転倒とその対策』p76)。また高齢者が嚥下力の低下から誤嚥を起こしやすいことは一般に指摘されているところです。
 また、介護の現場は高齢者(被介護者)生活の場であり被介護者(利用者)は1人の生活者であるから、自由、自立、自己決定の尊重が求められます。転倒を避けるために仮に抑制が効果的であったとしても、自由、自立、自己決定の尊重の見地からすれば、抑制は原則として許されません。
 このように介護事故は不可避ではありますが、介護事故が発生した場合、利用者の、QOLは確実に悪化しますし、場合によっては死にいたるケースもあります。介護事故は、避けられるものであれば避けたいところです。
そこで介護の現場では、よりよき介護サービスを提供するため、介護事故の発生を回避するという、事故予防に向けた熱心な努力が行われています。
 ここでいう介護事故は、介護者に法的責任が発生するかどうかを問わない、広い意味での、事故を言います。

(3) 介護過誤事件(損害賠償請求事件)としての介護事故判例−『あってはならない介護』
 これに対して、介護判例で取り扱われる介護事故は、紛争が訴訟までに発展し、法廷で介護者等の法的責任が厳格に問われる場面での、それを言います。医療過誤との対比でいえば介護「過誤」が問われる場面なのです。
 裁判では、利用者側と介護者側の両当事者が具体的事実について、攻撃防御を尽くした上で、中立の立場にある裁判所が司法的判断を下すわけで、考え抜かれた判断には重みがあります。
 ここでは、どういう利益とどういう利益が衝突し、どのような根拠からどちらの利益をどこまで優先するのか、具体的な行為として、その時、その状況では、何をすべきであったのか、あるいは避けるべきであったのかが具体的に示されます。
ここではまさに『あってはならない介護』が、クリアカットに、えぐり出されるわけで、介護現場における最低限度の行動規範が示されるわけです。

2,介護サービス契約
(1)介護サービス契約
 介護サービスをめぐる法律関係を考える場合、次の2点が重要だと思われます。
 1つは、措置制度のもとでは明確ではなかった「契約」という観念が介護保険の導入により明確になったことです。
 もう一つは、介護の本質に対する認識が、介護者が被介護者を保護するという保護型介護から、被介護者の自由、自立、自己決定を尊重する「支援型ケア」に転換されるに至ったことということです。
 まさに、介護は、利用者(被介護者)と介護者との「契約」であって、契約の本旨に従った介護サービスの提供が求められるのです。そしてその際、利用者(被介護者)の自由、自立、自己決定の尊重(軽視ないし無視してはならないこと)が重要な要素になった(なりつつつある)ということです。
この意味で、介護者の「契約」責任と利用者(被介護者)の「自由、自立、自己決定」が、介護の問題を考える上でのキイワードであると考えられます。

(2)介護サービス契約の性格
 介護における介護者と利用者(被介護者)の関係が介護サービス契約だとして、その法的性格は、「準委任契約」であると考えられます。
介護における介護者と利用者(被介護者)の関係は、しばしば医療における医師と患者の関係との対比(ないし共通性・類似性)で語られます。医療が病気の病気に治癒に向けた治療行為を内容とするのに対し、介護は身心の障害により日常生活上、手助けが必要な人に対する介助行為をいい、その議論は多面的な問題を含むものですが、この論点(法的性格論)については、医療も介護も、一定のサービス提供を内容とする契約である点(雇用でもなく、請負でもない)では共通しており、医療における医師と患者の関係に準じて考えていいように思われます。
上記のとおり、介護サービスの法的性格は、準委任契約と考えられるのですが、介護サービスの場合、サービス提供拒否は原則的に許されない(医療でも診療拒否は原則として許されません)のであって、委任といっても、その規定の適用が制限される部分は少なくありません。

3, 安全配慮義務について
  介護事故(過誤)判例では、しばしば利用者(被介護者)に対する介護者の『安全配慮義務』が問題にされます。
  安全配慮義務は、契約における附随義務あるいは保護義務とよばれる領域の問題であり、契約から生じる義務はひとり本来的義務につきるものではなく、信義則上を媒介として、各種の附随義務が裁判上肯定されるようになりました。当初は労働契約を中心に、問題とされていましたが、その後、請負、賃貸借、売買のほか、学校事故などにおいても問題にされるようになったもので、介護事故でも問題になります。それは不法行為責任とは異なる契約責任であるとされています。
  介護者は利用者に対し、介護サービスを提供する場合には契約の本旨に従ったサービス(本来の給付義務)を提供しなければならず、提供したサービスが不適切な場合は、債務不履行責任を負います。歩行介助をしている場合において介助の方法が不適切であったため、利用者が怪我をした場合には債務不履行責任を負います。
のみならず、介護者は、要介護状態にある利用者(被介護者)が安全に生活できるように、配慮すべき義務が、本体的債務に付随する債務として、信義則上、求められるとされています。例えば、本来歩行介助の必要な利用者が独自の判断で自立歩行して転倒した場合、本来的なサービスである歩行介助の過程で発生した事故ではなく、利用者が独自の判断による自立歩行をしたために発生したものですが、介護者が適切な見守りをしていれば、転倒を防止しえたのではないかということが問題にされることがあります。
 どのような場合にどのような安全配慮義務が課せられるかを考える上で、利用者の安全と自由、自立、自己決定の尊重との関係をどのように考えるかは極めて重要な問題です。
この場合、安全ばかりを強調する考え方も、あるいは自由ばかりを強調する考えもおそらくは正しくないと思われます。なぜなら、安全も自由も、利用者(被介護者)にとって、確保されなくてはならない重要な利益・権利であることは疑いを容れないからです。
安全と自由との関係をどう考え、どうバランスを取っていくかは、利用者(被介護者)の判断力も含めた要介護の状態、問題となる行為の危険性の程度等を総合的に勘案して具体的な局面において判断することが必要であり、多くの介護事故判例も基本的にはそういった視座から判断しているように思われます。

                                          弁護士 内橋一郎

以上

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