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2012.10.5 コラム一覧に戻る
保険法実務ノート(2)保険募集における情報提供規則と説明義務・助言義務@
保険法実務ノート(2)
〜保険募集における情報提供規制と説明義務・助言義務について@
                 弁護士 内 橋 一 郎            
1,  保険業法300条1項の趣旨
(1) 保険業法の行為規制
 保険募集においては、保険契約者側の知識が乏しいことに乗じて、保険契約者側の利益を損なう不適正な行為が行われる危険が高いことから、保険業法は、募集行為の取締という観点から、不適正行為の類型を具体的に列挙して禁止しています。
≪禁止行為≫
虚偽告知・重要事項の不告知
不実告知教唆・告知妨害・不告知教唆
不当な乗換募集
誤解を与える他商品との比較表示
断定的判断提供
誤解を与える表示
(2)  金融庁「保険会社向けの総合的な監督指針」
金融庁は、保険業務の健全かつ適切な運営及び保険募集の公正を確保し、保険契約者等の保護を図る見地から、「保険会社向けの総合的な監督指針」(以下「監督指針」という)を策定しています。
監督指針は、保険業法の規制の在り方を具体的に示すものですが、私法上の説明義務等を検討する上でも重要な役割(指標)を果たすものと考えます。
2,  禁止行為
(1)  虚偽告知、重要事項の不告知の禁止(業法300条1項1号)
@  保険会社等が、保険契約の締結及び保険募集において、保険契約者または被保険者に対して、虚偽のことを告げ、または保険契約の契約条項のうち重要な事項を告げない行為は禁止されています。
ここに「重要事項」とは、保険契約者が保険契約を締結の際に合理的な判断をなすために必要な事項をいうものとされています。
A  監督指針
監督指針は、重要事項を告げるにあたって、以下の事項をチェックすることを求めています。
(ア) 重要事項を告げる場合は、保険契約の種類及び性質等に応じて適正に行われているか。
(イ)  重要事項を告げるにあたっては、顧客が保険商品の内容を理解するために必要な「契約概要」と顧客に対して注意喚起すべき「注意喚起情報」について、分類の上、告げられているか。
「契約概要」とは、商品の仕組み、保障内容、特約、保険期間、保険金額、保険料、配当、解約返戻金等を保険契約条項のうち顧客が保険商品の内容を理解するために必要な事項をいいます。
「注意喚起情報」とは、クーリングオフ、告知義務の内容、責任開始期、免責事由等顧客に注意喚起すべき事項をいいます。
契約概要と注意喚起情報に分類しての説明が求められるのは、まず商品内容の説明をした上で、然る後に、クーリングオフ、告知義務の内容、責任開始期、免責事由等の重要事項について注意喚起を図る趣旨です。
(ウ)  顧客から重要事項を了知した旨を十分に確認し、事後に確認状況を検証できる態勢にあるか。
(2)  不実告知教唆(業法300条2号)、告知妨害、不告知教唆(同3号)
@  ここにいう「重要事項」は、保険法4条の告知義務に関する「重要な事項」で保険会社が告知を求めたものをいいます。
A  不実告知教唆(業法300条2号)、告知妨害、不告知教唆がある場合には、仮に告知義務違反があったとしても解除権が制限されます(28条2項)
(3)  不当な乗換募集(同4号)
@  不利益となるべき事実を告げずに、既に成立している保険契約を消滅させて新たな保険契約の申込みをさせ、又は新たな保険契約の申込をさせて既に成立している保険契約を消滅させることを「乗換」といい、4号で禁止されています。 
A  乗換には、他社からの乗換、自社商品の乗換、生保と損保の乗換等があります。
B  乗換に関する正確な情報提供が必要であり、不利益(解除控除、配当請求権喪失等)を告げずに、乗換募集行為をしてはならないとされています。
C  消費者契約法の取消(不利益事実の不告知)
 契約者に対し、重要事項又は重要事項に関する事項について、利益になる旨告げ、不利益となる事実を故意に告げないことにより、誤認して乗換えを行った場合には消費者契約法4条2項の不利益事実の告知により取消されるケースもあります。
D  終身保険乗換え勧誘事件大阪地判平成21年9月30日(証券判例セレクト36−119)
 年金の外には月5万円のパート収入しかない71歳の女性が、入院費用や葬式代にあてるために、自己を被保険者とする簡易保険を解約させられ、息子を被保険者とする外貨建て終身保険、生活習慣病保険、終身保険に、被保険者の息子の同意なしに乗り換えさせられた件につき、大阪地裁判決は、不法行為に基づく既払保険料の外慰謝料、弁護士費用相当額の賠償を認めました。大阪の弁護士が獲得された判決ですが、乗換に関する裁判例として希少性があり、かつ慰謝料を認める等とても重要な判例であると思います。
(4)  誤解を与える他商品との比較表示(同6号)
@  他の保険契約との比較において誤解させるおそれのある表示を禁止しています。
A  監督指針には以下の例示がなされています。
(ア) 客観的事実に基づかない事項又は数値を表示
(イ) 契約内容について正確な判断を行うに必要な事項を包括的に示さず、一部のみの表示
(ウ) 長所のみの、ことさらな強調
(エ) 同等とされていない保険契約間の比較
(オ) 他契約の短所の不当な強調
(5)  断定的判断提供の禁止(7号)
 将来における契約者配当または社員に対する剰余金の分配その他将来における金額が不確実な事項について、断定的判断を示し、または確実であることと誤解させるおそれのあることを告げ、若しくは表示する行為を禁止しています。
(6)  誤解を与える表示(9号、施行規則234条1項4号)
 保険契約者等又は不特定の者に対して、保険契約等に関する事項であって、その判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、誤認させるおそれのあることを告げ、又は表示する行為を禁止しています。
※  景品表示法(4条1項)の優良誤認行為
 景品表示法4条1項1号は、事業者が自己の供給する商品または役務の取引に関し、商品または役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、または事実に相違し当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものより著しく優良であると示すことにより、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示を行うことを禁止しています。
 生命保険会社のがん保険の約款が、がんの診断が確定する前の入院期間についてはがん入院給付金を支払わないと定めているにもかかわらず、パンフレットの入院給付金に関する表示で入院期間の1日目にさかのぼって入金給付金が支払われるような表示があったケースにつき、公正取引委員会は景品表示法4条1号の規定に違反すると判断して排除命令を発令しました。
また金融庁はこのケースにつき、保険業法300条1項1号、9号(施行規則234条1項)の禁止行為に該当するとして、業務改善命令を行っています。
     このように、1つの行為が景品表示法に違反すると同時に保険業法に違反することがあります。

以上

弁護士内橋一郎
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