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2012.11.02 コラム一覧に戻る
保険法実務ノート(6)交通事故をめぐる保険〜自動車保険A
保険法実務ノート(6)
交通事故をめぐる保険〜自動車保険A
                                              弁護士内橋一郎

≪はじめに≫
 今回は他人性、加害者請求と被害者請求、損害の算定、仮渡金請求と差押禁止、免責頃由、重過失減額について整理しました。


1,他人性
(1)他人とは、運行供用者及び運転者以外の者(最判昭和42年9月29日判決、判時497号41頁)をいいます。
(2)「妻は他人か」
 ☆最判47年5月30日(交通事故百選○32)
 ・夫が自己所有の車を運転中に崖から落ちて同乗中の妻重傷を負ったケースにつき、妻は他人に該当するとしました。

※任意保険では、被保険自動車を運転中の父母、配偶者、子、被保険者の父母、配偶者、子が被害者のなった親族間事故では免責としています。
(3)好意同乗
 ☆最判昭和42年9月29日(判時497号41頁)
 ・酩酊して助手席に乗り込んだ者の同乗を拒まずに出発したところ、運転者が事故を起こしたケースで、好意同乗者の他人性を肯定。

(4)共同運行供用者
  ☆最判昭和50年11月4日(民集29巻10号1501頁)
  ・会社所有の車で取締役と従業員が同乗中、運転していた従業員が事故を起こして、取締役が負傷したケースにつき、取締役の運行支配は直接的、顕在的、具体的であるとして、他人性を否定。 

2,自賠責保険の加害者請求と被害者請求
(1)加害者請求と被害者請求
@加害者請求(自賠法15条)
A被害者請求(自賠法16条)−被害者保護の見地から、被害者に保険会社に対する直接請求権を認めました。
(2)保有者に対する権利と保険者に対する権利
☆最判昭和39年5月12日(百選○29)
・自賠法3条又は民法709条によって保有者及び運転者が被害者に損害賠償責任を負う場合に、被害者が保険会社に対しても自賠法16条1項に基づく損害賠償請求権を有するときは、右両請求権は別個独立のものとして併存し、特別の事情がない限り、右保険会社から受けた支払額の内容と抵触しない範囲では加害者に対して財産上又は精神上の損害賠償を請求し得る。

3,損害額の算定
(1)自賠責査定基準(定額制)
@自賠法は、被害者に対する基本的な補償を目的とするため、損害算出に際し、不法行為訴訟における損害額の算出とは異なり、定額による損害額の算出を行うこととされています(自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共催等の「支払基準」)。
A損害
・積極的財産損害
・消極的財産損害
・非財産的損害(慰謝料)
・算定額については、いわゆる赤い本、青い本が詳しいです。
(2)自賠責査定基準の拘束力
☆最判平成18年3月30日(百選○30)
・自賠法16条1項に基づいて被害者が保険会社に対し、損害賠償請求訴訟をする場合につき、「自賠法16条の3第1項は、保険会社が被保険者に対しして支払うべき保険金又は16条1項の規定により被害者に支払うべき損害賠償額(以下『保険金等』という)を支払うときは、死亡、後遺障害及び傷害の別に国土交通大臣及び内閣総理大臣が定める支払い基準に従ってこれを支払わなければならない旨規定している。自賠法16条の3第1項の規定内容からすると、同項が保険会社に支払基準に従って保険金を支払うことを義務付けた規定であることは明らかであって、支払基準が保険会社以外の者をも拘束する旨を規定したと解することはできない。支払基準は、保険会社が訴訟外で保険金等を支払う場合に従うべき基準にすぎないものというべきである。そうすると、保険会社が訴訟外で保険金を支払う場合の支払額と訴訟で支払を命じられる額が異なることがあるが、保険会社が訴訟外で保険金等を支払う場合には、公平かつ迅速な保険金等の支払の確保という見地から、保険会社に対して支払基準に従って支払うことを義務付けることに合理性があるのに対し、訴訟においては、当事者の主張立証に基づく個別的な事案ごとの結果の妥当性が尊重されるべきであるから、上記のように額に違いがあるとしても、そのことが不合理であるとはいえない」。

4,仮渡金請求と差押禁止
(1)仮渡金請求
被害者は保険会社に対し政令で定める金額を損害賠償額支払の仮渡金として請求できます(自賠法17条1項)。
(2)差押禁止
 被害者保護の見地から、自賠法16条1項の直接請求権と17条1項の仮渡金請求権を差押禁止債権としています(自賠法18条)。

5,免責事由
@自賠法は保険契約者及び被保険者の悪意によって生じた損害について保険会社の免責を定める(自賠法14条)。
Aこの場合であっても、被害者は保険会社に対し、直接請求をすることができる(自賠法16条4項)とされています。

6,重過失減額と過失相殺
(1)重過失減額の基準(後遺障害・死亡に係るもの)
  過失割合:減額割合
  7割未満:減額なし
  7割以上8割未満:2割減額
  8割以上9割未満:3割減額
  9割以上10割未満:5割減額

・傷害に係るものは、7割未満は減額なし、7割以上は2割減額
(2)従って、過失が大きいと考えられるケースでは、訴訟に先立って被害者請求を行うことが多いように思われます。
                                                  

以上

弁護士内橋一郎
〒664-08523 兵庫県伊丹市南本町2丁目4番6号 コバコンスビル2階 TEL:072-787-8010
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