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2012.11.21 コラム一覧に戻る
保険法実務ノート(7)交通事故をめぐる保険〜自動車保険B
保険法実務ノート(7)
交通事故をめぐる保険〜自動車保険B
                                          弁護士内橋一郎

今回は、対人賠償保険について、まとめます。
V対人賠償保険
1,対人賠償責任保険
対人賠償責任保険は、自賠責保険の上積保険とされています。

2,約款の用語
用語 定義
記名被保険者:保険証券記載の被被験者
被保険自動車:保険証券記載の自動車
対人事故:被保険自動車の所有・使用・管理に起因して他人の生命・身体を害すること
配偶者:内縁関係を含む(下記判例後、明記)
※最判平成7年11月10日(判時1553-92、判タ897-251)
免責条項の「被保険者を運転中の者の配偶者」には内縁関係を含むとされています。

3,保険事故
(1)保険事故は下記の2つです。
@被保険自動車の所有、使用または管理に起因して生じた偶然の事故により他人の生命または身体を害したこと
A @により、被保険者が法律上の損害賠償責任を負うこと
(2)自賠責保険との相違
@保険事故
・自賠法の「自動車の運行によって」より広く、車庫で保管中の自動車の爆発を含むとされています。
A他人性
・他人とは、被保険者以外の者をいうが、被害者が被保険者の父母、配偶者、子等は約款規定により保険金が支払われません。
B過失相殺の適用
・自賠責保険では、被害者に重大な過失が認められる場合に限り、その程度に応じて定型的な減額が行われるに止まりますが、対人賠償保険では一般原則に従い、過失相殺を適用されます。

4,被保険者の範囲
(1)記名被保険者
(2)被保険自動車を使用または管理中の以下のいずれに該当する者
@記名被保険者の配偶者
A記名被保険者またはその配偶者の同居の親族
B記名被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子
(3)記名被保険者の承諾を得て被保険自動車を使用、管理中の者。ただし自動車取扱業者を除く。

(4)記名被保険者の使用者。但し記名被保険者が被保険自動車を当該使用中の使用者の業務に使用している場合に限る。 

・同居とは、同一家屋に居住していれば足り、同一生計や扶養関係の有無は問わないとされています。

5,免責事由
(1)免責事由T〜以下の事由に該当する場合 
@保険契約者、記名被保険者またはこれらの者の法定代理人の故意
A記名被保険者以外の被保険者の故意
B戦争、地震・津波、台風等
・保険契約者または記名被保険者が法人の場合、その理事、取締役または法人の業務を執行するその他の機関をいいます。
※最判平成5年3月30日(百選○35)
傷害の故意はあったものの予期しなかった死亡の結果を生じた場合には、故意免責条項の適用はない。
(2)免責事由U〜被害者が以下に該当する場合
@記名被保険者
A被保険自動車を運転中の者またはその父母、配偶者、もしくは子
B被保険者の父母、配偶者、または子
C被被検者の業務に従事中の使用人
D被保険者の使用者の業務に従事中の使用人。ただし被保険者が被保険自動車をその使用者の業務に使用している場合に限る。
・業務から家事は除く。

6,直接請求権(賠償責任条項11条)
(1)趣旨
・自賠法の直接請求権は自賠法16条によるのに対し、対人賠償保険のそれは約款によるものです。
・任意自動車保険が付保されているにもかかわらず、被保険者の破産や行方不明等の理由で被害者が救済されない事態を解消するために設けられたものです。
(2)損害賠償請求
 事故の被害者、相続人、慰謝料請求権者(民法711条、886条〜890条)
(3)被害者の直接請求権の発生要件
@対人事故により、被保険者が法律上の損害賠償責任を負担すること
A保険会社が被保険者に対し支払責任を負うこと
(4)保険会社の支払条件〜以下の条項に該当した時に支払う。
@損害賠償責任の確定(判決・和解・調停・示談等)
A損害賠償請求権不行使の書面による承諾
B損害賠償額が保険金を超過することが明らかであること
C被保険者の破産等
(5)保険会社の抗弁権
 保険会社は、被害者に対しても、被保険者に対して主張し得る各種の抗弁(免責事由等)を以て対抗できるとされています。
(6)  直接請求と保険給付請求との競合
 被害者の直接請求と被保険者の保険金請求が競合した場合、被害者保護の見地から、直接請求を優先させる(4項)とされています。
(7)被害者の先取特権
責任保険の被保険者に対して損害賠償請求権を有する者は保険金請求権に対して先取特権を有する(保険法22条)とされています。

7,通知義務
(1)約款上の通知義務(基本条項5条)
@被保険車の用途・車種または登録番号の変更、告知事項の内容の変更がある場合には、遅滞なく保険会社に通知する義務があるとされています。
A告知事項に関する危険増加が生じた場合において、保険契約者または被保険者が、故意または重大な過失によって、遅滞なく通知をしなかった時には、保険会社は書面により保険契約を解除することができ、保険会社が行った解除が保険事故発生後であっても、危険増加が生じた時以降に発生した事故に対しては保険金を支払わないと規定されています「。
(2)事故通知の通知義務に関する判例
※最判昭和62年2月20日(百選N判時1227号134頁判タ633号248頁)
 事故発生の日から事故通知なく60日を経過した場合、保険会社は原則的に保険金を免責される約款規定について、「事故通知義務は保険契約上の債務と解すべきであるから、保険契約者又は被保険者が保険金を詐取し又は保険者の事故発生の事情の調査、損害てん補責任の有無若しくはてん補額の確定を妨げる目的等保険契約における信義誠実の原則上許されない目的のもとに事故通知をしなかった場合において、保険者は損害のてん補責任を免れうるものというべきであるが、そうでない場合においては、保険者が前記の期間内に事故通知を受けなかったことにより損害てん補責任を免れるのは、事故通知を受けなかったことにより損害を被ったときには、これにより取得する損害賠償請求権の限度においてであるというべきであり、前記約款もかかる趣旨を定めた規定にとどまるものと解するのが相当である」。

8,被保険自動車の譲渡と入替
(1)被保険自動車の譲渡(基本条項7条)
@被保険自動車が譲渡された場合でも、常に保険契約上の権利・義務は移転するわけではなく、保険契約上の権利・義務を譲受人に譲渡する旨の承認裏書請求があり、保険会社がこれを承認した場合に限り被保険自動車の譲受人に移転するとされています。
A被保険自動車が譲渡された後に生じた事故による損害または傷害には保険金は支払われません。
(2)被保険自動車の入替(基本条項8条)
@趣旨
自動車保険の目的物である自動車が保険期間中に買い替えにより他の自動車に入れ替えられることが多いため、被保険自動車と同一の用途車種であれば、保険契約者からの承認請求により、新たに取得した自動車に保険適用すると定めています。
A効果
自動車入替を通知し、被保険自動車の変更の承認請求をした場合に、保険会社がこれを承認した時は入替後の自動車に保険適用されます。
                           

以上

弁護士内橋一郎
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