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2013.7.22 コラム一覧に戻る
夏のゆうぐれ
夏のゆうぐれ                                          内橋 一郎

 若山牧水に、
かんがえて飲みはじめたる一合の二合の酒の夏のゆうぐれ
という歌がある。
 牧水はたいへんな酒豪だったらしい。
 前日もたくさんのお酒を飲んだ、きょうはどうしよう、きょうはやめようか、いやすこしだけなどと考えて、そう考えながら、飲みはじめお酒だが、一合となり、二合となり、・・・という歌なのだろう。
 結句は、秋のゆうぐれでも、冬のゆうぐれでもなく、春のゆうぐれでもなく、やはり「夏のゆうぐれ」でなくてはならない。

 「夏のゆうぐれ」というと思い出す情景がある。
 ぼくのこどものころ、昭和30年代の終わりから40年代の初めころだろうか、夏のゆうぐれ、仕事を終えた男たちは、夕涼みに、床机を出し、そこに座って、談笑したり、将棋を指したりしていた。その傍らには、まだ明るさの残っている中でも、早々と花火に火をつけているこどもたちもいた。
高度成長期の始まる頃であったが、それでも、男たちは、夏のゆうぐれ、には家に帰って寛いでいた。時間はまだゆっくりと流れていた時代だった。

「夏のゆうぐれ」、に飲むのであれば、なにがいいだろうか。
牧水はお酒だが、ぼくなら、まずはビールを、ぐびと、飲みたい。オンからオフに切り替わる瞬間だ。
ビールを飲みながら、おつまみ(前菜)を作り、白ワインを開けたい。いまなら、きりっと冷やした、軽やかな白だ。

 ぼくとワインとの付き合いは結構長い。9代目松本幸四郎が市川染五郎を名乗っていた頃、妻の藤間紀子さんとご夫婦でワインのCMに出ていた。「金曜日にはワインを買って」というCMソングが流れていたように思う。1970年代だった。
最初はドイツワインだった。そしてボルドーの濃い赤が好きになった。その頃はボルドーの上級ワインもそう高くはなかったのでぼくでも手が出せた。そして年を経るとともにブルゴーニュが好きになっていった。ワインも勉強もよくし、一時期はワイン本を数十冊持っていた。この銘柄のこのヴィンテージのワインについて、ロバート・パーカー(世界一有名なワイン評論家)が、何点をつけ、どういうコメントをしていたなどのことがすらすらいえた(そんなこと意味がないが)。レストランのソムリエさんとも親しくなり、紹介して頂き、ワイン会にも参加するようになった。レストランでのワイン選びも楽しいし、あるいはお店に無理を言ってワインを持ち込ませてももらったこともあった。1980年代の終わりから1990年代のことである。

 ワインを好きになったのは、むろん、美味しいからだが、それだけではなく、そこに、なにかしら、文化の香りを感じたからだと思う。ハイカラという言い方がむかしあったが、オシャレな、洗練されたものに対するある種の憧れをそこに感じたのだろう。
 またディティールにこだわることも楽しかった。ある1つの銘柄のヴィンテージ別のワインを開けることを縦並び、同じヴィンテージの作り手の異なるワインを開けることを横並びということがあるらしいが、そういったディティールが楽しかった。ちなみにぼくのヴィンテージはグレートとまではいかないが、かなりいいヴィンテージだ。生まれ年のオー・ブリオンをワイン仲間と開けたことも楽しい思い出の1つだが、今ではそんなバックヴィンテージはあまり残っていないかもしれない。

 2013年のいまは、ワインの銘柄やヴィンテージなどにこだわることがなくなった。そもそも外食は殆どしなくなったし、若い頃と異なって、欲しいものもあまりなくなった。
格安ワインを買ってきては、家で、おつまみや惣菜と一緒に、ワインを頂くだけで、十分だ。むしろ、そこそこ美味しいワインを、どこまで安く買えるか、の方が楽しい位だ。それで十分に満足している。心満ちている。

 ほどほどの時間に仕事を終えての、「夏のゆうぐれ」。
 まずビールで喉の渇きをいやし、次いで、白ワイン。でも、お刺身をいただくのであれば冷酒がいいし、肉料理には赤ワインがかかせない。たまにはシャンパンでぜいたくするのもいいだろう。
 ぼくは、牧水とちがって、全くの下戸ではあるが、それでも、牧水の気持ちがすこしわかるような気がする。

 まだ7月だが、強烈な暑さだ。暑い日が、これからも、10月近くまで続くだろう。
 仕事の質はそれにかける時間に正比例するというのが、ぼくの仕事上の信条だが、しかし、いい仕事をするためには、オフも必要だ。
 「夏のゆうぐれ」を、ぼく流のやり方で楽しみ、この暑い夏を乗り切りたいと思う。
                                                   




以上

弁護士内橋一郎
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