みのり法律事務所みのり法律事務所サイトマップ
CONTENTS MENU
HOME
当事務所のポリシー
メンバー紹介
活動分野一覧
医療事故・医療過誤 >>
金融商品取引・証券取引 >>
先物取引 >>
保険法 >>
独禁法・フランチャイズ >>
家事・相続 >>
一般民事 >>
再生手続 >>
相談・依頼までの手順 弁護士費用
コラム
インフォメーション
リンク
アクセス
プライバシーポリシー
コラム
2013.11.12 コラム一覧に戻る
新しい保険のカタチ
弁護士 内橋一郎
1.はじめに
 最近、保険のCMが目につくように感じます。
 従来からの生保、損保のものに加え、外資系の保険会社、インターネットが売りの保険会社、さらには保険ショップ(保険代理店)などのCMが頻繁に流れています。ほけん百科という名の保険ショップがあるようですが、まさに百花繚乱の感があります。これらは、とりもなおさず、来店型保険ショップやインターネットを通じた募集の増加という保険募集チャンネルの多様化や保険代理店の大型化といった保険募集を巡る環境が変化していることを示唆していると考えられます。
 そうした新しい保険募集を巡る環境変化に対応するため、金融審議会ワーキンググループ(以下「WG」といいます)は、平成25年6月7日、「新しい保険商品・サービス及び募集ルールのあり方について」を発表しました。同月末に出版された『保険法Map(解説編)』では第5章「保険業法の情報提供義務と説明義務・助言義務」をぼくが執筆したのですが、WG報告書の「新しい保険商品・サービス及び募集ルールのあり方について」脱稿後でふれることができなかったので、本コラムで「保険募集・販売ルール」について簡単に紹介しておきたいと思います。
 ここでは、保険募集の基本的ルールの創設、保険募集人の義務、保険仲立人に関する規制の3つについて簡単に説明します。

2.保険募集の基本的ルールの創設
(1)保険募集の基本的ルールの創設の第1は、意向掌握義務の導入です。
 保険は個々の顧客が抱えているリスクを多数の者で分散する制度ですが、顧客の抱えているリスクは多種多様であり、抱えているリスクのうち、どの部分を保険によってカバーするのかも顧客により異なります。
 そこで、顧客が自らの抱えているリスクを認識し、その中でどのようなリスクを保険でカバーするのかを認識した上で保険に加入できる環境を整備するために、「保険会社又は保険募集人は、保険募集に際して、顧客の意向を把握し、当該意向にそった商品を提案し、当該商品について当該意向とどのように対応しているかも含めて分かりやすく説明することにより、顧客自身が自らの意向に沿っているものであることを認識した上で保険加入する必要がある」旨の義務規定を法律上設けることをWGでは提案しています。
 金融商品取引法には適合性原則が規定され、その派性原則として、顧客の意向等を確認する顧客熟知義務(ノウユアカスタマールール)がありますが、同趣旨のものと解されます。従前も意向確認書面の使用があったのですが、その運用は極めて形式的、表層的なものに止まっており、今後は、顧客の意向で実質的な確認が求められるものと考えます。
(2)第2は、情報提供義務の法定化です。
 現在も保険業法300条は、保険募集に関して、「保険契約の契約条項のうち重要な事項を告げない行為」が禁止され、「契約概要」及び「注意喚起情報」の交付義務が定められていますが、告げないことが禁止されている範囲が契約内容に限定されることや不告知が刑事罰の対象となることから謙抑的に運用される等の指摘があり、
顧客に商品内容等の正しい理解を確保するために、他の金融商品と同様に、情報提供義務を明示的に法令において位置付けようとしたものです。
(3)第3は、募集文書の簡素化です。
 保険募集の現場においては、「契約概要」や「注意喚起情報」という文書以外に、契約のしおり、約款、パンフレット等が交付される等情報量が多すぎて理解可能な程度を超えたものになっているとの指摘を受け、簡素でわかりやすい募集文書の作成を促すこととされたのです。

3.保険募集人の義務
(1)募集形態多様化により、保険会社と保険募集人の関係も多様化しており、保険募集人独自の判断で複数保険会社商品比較推奨販売を行ったり、募集に関する業務の一部をアウトソーシングしたりする等、ある特定の保険会社が保険募集人の全容を把握し、管理指導を行うという法が想定していたケースに当てはまらない場合が増えつつあります。
 このため、保険募集人の実態に合わせた規制(義無)が提案されました。
(2)保険募集人の義務の第1は、保険募集人の体制整備義務です。
 原稿の保険業法には、保険会社に対して体制整備義務が課されていますが、保険募集人にはそのような義務付けはなされていませんでした。
 しかし、乗合代理店(2つ以上の保険会社から母権募集の委託を受けている保険募集人をいいます)には、数百の店舗で保険募集を行う等大規模なものが出現していること等から、保険会社のみならず、保険募集人のみならず、保険募集人に対しても、その業務の規模・特性に応じて、保険募集に係る業務を整備することが必要であることをWGは提案しました。
(3)第2は、乗合代理店は、2つ以上の保険会社から保険募集の委託を受けており、自らが取り扱う複数保険会社の商品の比較推奨販売等を行う者が増加しているが、当該商品の比較・推奨の適正化を図る観点から、@当該乗合代理店が取り扱う商品のうち、比較可能な商品の全容を明示するとともにA特定の商品を提供・推奨する際には、当該推奨理由を分かりやすく説明することが求められるようになったのです。
 また乗合代理店の立場について顧客の誤認防止の観点から@乗合代理店は法律上は保険会社側の代理店であるという自らの立場について〉明示すると共にA保険会社の代理店としての立場を誤解させるような「公正・中立」と言った表示を行うことが禁止されるようになったのです。
(4)第3は、保険募集人の委託管理責任です。
 従来、保険募集人(代理店)については業務委託先の管理責任が設けておらず、業務委託先に問題が生じた場合の保険募集人(代理店)の保険業法上の責任は曖昧なものであった。そこで、保険募集人が業務の一部を外部委託する場合には、当該委託先の業務運営が適切に行われているかを確認する体制整備を求めることになりました。

4.保険仲立人に関する規制
保険仲立人は、保険会社から独立した存在として、顧客の側に立って、保険募集を行う者として位置付けられており、募集行為に関する一定の禁止行為や顧客に対する誠実公正義務が課されているが、十分に活用されていない状況にあることから、保険仲立人への新規参入や活性化を図るため、規制を緩和し、@委託契約書の法制化による保険仲立人の立場の明確化、A結約書の簡素化等の規制緩和を図ったのです。

5.おわりに
 「保険法Map(解説編)」では、第5章「保険業法の情報提供規制と説明義務・助言義務」を執筆し、情報提供規制と適合性原則・説明義務・助言義務について、いろいろと考えました。
今回のWG報告書では、意向掌握義務の法定化、乗合保険代理店と保険仲立人の立場の違いの明確化、乗合保険代理店についての情報提供義務の充実等が図られ、助言義務に近い内容も盛り込まれることになっており、いいことだと思います。
 しかし、問題は、募集の実態であって、従前のような名ばかりの「意向確認書面」では意味がなく、実質的な充実と運用が求められると考えます。

                                                  以 上
 

以上

みのり法律事務所
〒650-0023 神戸市中央区栄町通6-1-17-301 TEL:078-366-0865 FAX:078-366-0841
Copyright MINORI LAW OFFICES. All Rights Reserved.