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2007.05.02 コラム一覧に戻る
消費者契約法の上手な使い方
〜断定的判断提供を認定し、不当な示談の取消を認めた裁判例
1, 消費者契約法が施行されてから、足かけ7年になります。消費者契約法が限定的な規定であったため、その実効性を疑問視する声も少なくなかったのですが、それでも7年間の蓄積は大きく、たくさんの判例が生まれました。学納金や敷金に関する判例群がそれです。消費者契約法を積極的に活用しよう、使いこなそうとの心意気のもと、適用要件のきびしい、窮屈な規定を上手に使った、実務家の工夫から生まれた判例群だと思います。
 それらの消費者契約法判例に、また1つ新しい判例が加わりました。消費者4条1項2号(断定的判断提供)を適用し、不当な示談契約の取消を認めた判例(大阪高裁平成19年4月27日判決)がそれです。
 示談とは、民事上の争いをしている当事者が裁判外において話し合いにより、その紛争を解決することをいいます。示談が成立すると法的効力を生じ、原則として(錯誤等が認められない限り)その効力を覆すことはできません。しかし、上記判例は(錯誤等がない場合でも)示談の成立過程が不当な場合には、消費者契約法(4条1項2号=断定的判断提供)を使って、その効力を否定しうるケースがあることを認めたもので、実務上参考になると思われますので、ご紹介いたします。

2, 事案は、50才代の女性が平成17年1月から10月まで外国為替証拠金取引(以下「為替取引」という)業者との間で為替取引を行って、預託金残高が約500万円あったのですが、10月下旬に業者の担当者がやってきて、「会社に関東財務局の監査が入った。6ヶ月程度の営業停止になり、そうなると、会社がつぶれ、預託金は殆ど戻ってこない。戻ってこないお金よりも財務局の結果が出る前の今なら返還できる」などと称して委託者を不安に陥れ、残高が約500万円あったにもかかわらず、150万円での示談を迫り(約350万円については債権放棄)、和解合意書(示談書)にサインさせたというものです。担当者が言うように、会社はその後、営業停止になりましたが、破産することはなく、現在も営業しています。
 もともと預託金残高が500万円あったのであり、それは返還を求められたら返さなくてはならないお金ですから、350万円について放棄する理由はなかったはずで、その不当性は明らかです。しかし、委託者は意味内容を理解して和解合意書にサインしているので、錯誤はなく、これまでの例では争うことは難しかったケースです。
 大阪高裁は、このケースについて、消費者契約法4条1項2号の断定的判断提供による取消を認め、委託者の約350万円の返還請求を肯定しました。

3, 消費者契約法4条1項2号は、事業者が消費者契約の締結について勧誘するに際し、消費者に対し、消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価格、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来の変動が不確実な事項につき、断定的判断を提供し、消費者が確実であると誤認して、意思表示した場合にはその意思表示を取り消すことができると規定しています。
 一審(神戸地裁伊丹支部)は、ある程度の金融知識と取引経験を有する委託者が全く担当者の言いなりになったとは考えがたいとして、委託者の請求を棄却しました。 
これに対し、大阪高裁は、業者の担当者が、為替取引の営業停止の行政処分を受け、その結果、倒産し、委託者に預託金の殆どが返還されなくなるかどうか確実でない、「将来における変動が不確実な事項」について、断定的判断を提供したと認定しました。
 ここに「将来における変動が不確実な事項」が金融取引における各種の指数・数値、金利、通貨の価値等消費者の財産上の利得に影響する将来を見通すことができない経済的事項に限定されるかどうかについては学説上、議論があったのですが、大阪高裁は会社の倒産可能性、預託金の返還可能性のような事項も「将来における変動が不確実な事項」としました。

4, 消費者契約法については現在見直しの時期で、消費者契約に関する情報提供、不招請勧誘、適当性原則等についても検討課題とされており、立法による活性化も絶対に必要なことですが、それ自体としては不十分な法でも狭い適用範囲を広げる努力や工夫で、上手に使いこなすことによる活性化もまた重要であると考えます。

(内橋一郎)

以上

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