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 1,金融商品取引法上の行為規制について
 証券の取引を規律していた証券取引法が『金融商品取引法』として大改正され、平成19年9月30日から施行されています。
 ここにいう金融商品としては、「有価証券」と「デリバティブ取引」がありますが、さらに「集団投資スキーム」についても、「みなし有価証券」として、規制対象に含まれるようになりました。
 金融商品取引業者から勧誘を受ける消費者(投資家)の立場からすれば、最も重要と思われる、金融商品取引法の行為規制(勧誘規制)として、どのようなものがあるかについて簡単に紹介します。
 (1)誠実公正義務
 金融商品取引業者(以下では「業者」といいます)は、顧客に対し、誠実かつ公正にその業務を遂行しなければならない(36条)。
 (2)広告規制
 業者は、その行う金融商品取引業の内容について広告(広告類似行為を含む)を行うには、商号、登録番号、手数料等内閣府令で定める事項を表示することが義務づけられる(37条1項)。
 (3)不招請勧誘禁止、勧誘受諾意思不確認禁止、再勧誘禁止
・相対の金融デリバティブ取引及びその媒介、取次、代理については、勧誘の要請をしていない顧客に対し、訪問ないし電話勧誘が禁止される(38条3号)。
・取引所金融デリバティブ取引及びその媒介、取次、代理等については、勧誘に先立って顧客に対し、その勧誘を受ける意思の有無を確認することをしないで勧誘する行為が禁止される(38条4号)。
・取引所金融デリバティブ取引及びその媒介、取次、代理等については、勧誘を受けた顧客が契約を締結しない旨の意思や勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を表示したにもかかわらず、再勧誘する行為が禁止される(38条5号)。
 (4)適合性原則
 業者は、金融商品取引行為について、顧客の知識、経験及び財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして不当と認められる勧誘を行って投資者の保護に欠けることになっており、又は欠けるおそれのあることのないよう業務を行わなければならない(40条1号)。
 (5)契約締結前の書面交付義務、契約締結時の書面交付義務、説明義務、クーリングオフ
・業者は、契約締結前に、業者の商号、登録番号、契約の概要、手数料その他顧客が支払う対価の種類毎の金額・計算方法等、指標変動により元本欠損のおそれがあるときはその旨、指標変動により保証金の額を上回る損失のおそれがある時はその旨等を記載した書面を交付する義務がある(37条の3)。
・契約締結時も、書面を交付する義務がある(37条の4)。
・契約締結前交付書面や目論見書の交付に関し、それらの書面に記載すべき事項について、予め顧客の知識、経験、財産状況及び目的に照らして当該顧客に理解されるに必要な方法及び程度による説明をしないで金融商品取引契約を締結する行為を禁止した(38条6号)。
・契約締結時交付書面を受領して10日以内ならば書面により契約解除を行うことができる(37条の6)。
 (6)虚偽告知の禁止、断定的判断提供の禁止
・業者は、金融商品取引契約の締結、勧誘に関して、顧客に対して虚偽のことを告げる行為をしてはならない(38条1号)。
・業者は、顧客に対し、不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤解させるおそれのあることを告げて金融商品取引契約の締結を勧誘する行為をしてならない(38条2号)。
 2,金融商品取引被害とその救済の可能性について
 (1)金融商品取引被害と救済の可能性
 「投資家の自己責任」ということがしばしば言われます。自分の判断で金融商品取引を行って損失を被ったとしてもその結果は自分で甘受しなければならないという金融商品取引の大原則です。
 では金融商品取引で損害を被ったとしても、自己責任原則から損害回復はできないのでしょうか。
 しかし、実際の取引は証券会社の勧誘や助言に基づいて行われることが多く、投資家は証券会社の勧誘・助言に強い影響を受けるのが実情ですので、証券会社の勧誘が金融商品取引法(証券取引法)上の投資家保護規定や民法の信義則に違反し、債務不履行ないし不法行為を構成する場合には「損害賠償」が可能になります。この場合の損害賠償は自己責任原則に反しません。
 (2)2つの違法類型−『説明義務違反』型と『過当取引』型
 では、どのような場合に損害賠償が認められるのでしょうか。
 金融商品取引に関して投資家の証券会社に対する損害賠償が認められた民事判例をラフに分類すれば、「説明義務違反」型と「過当取引」型の2つの違法類型に分けられるように思えます。
 ここに「説明義務違反」型とは投資勧誘行為が「適合性原則」ないし「説明義務」に違反するとされた類型を想定しています。
 すなわち「適合性原則」とは、証券会社は投資家の知識・経験、財産状態に照らして不適当と認められる勧誘をしてはならないとする原則です。また「説明義務」とは、証券会社が高い専門的知識を有するのに対し、一般投資家にはそのような知識がないことから、仕組みが複雑でハイリスクの金融商品を勧誘するにあたっては、その仕組みやリスクを投資家が理解できるように説明する義務が課されるとするものです。
 「ワラント」、「オプション」、「EB債」等をめぐる裁判例では主として、適合性原則違反と説明義務違反が問題となりました。
 これに対し、「過当取引」(型)は、証券会社が顧客の取引口座に支配を及ぼし、顧客の信頼を濫用して、顧客の資産・経験・知識・口座の性格に照らして過当な取引を行うことであり、顧客に対する「誠実公正義務」に違反する詐欺的・背任的行為をいいます。「説明義務違反」型不法行為が1回の勧誘行為の適否を問題とするのに対し、「過当取引」型不法行為では一連の取引における証券会社の誠実公正義務違反が問題になります。
 たとえば、株式の「信用取引」で、短期で頻繁な売買を繰り返すと、多額の手数料がかかり、また価格の騰落により、莫大な損害を被ることがありますが、そのような頻繁売買では「過当取引」が問題になります。
 (3)過失相殺
 金融商品取引をめぐる民事裁判で証券会社の勧誘が違法であると判断されても、必ずしも被った損害全部の賠償が認められるわけではなく、投資家側にも落ち度があったとして賠償額が減額されることがあります。
 これを「過失相殺」といいますが、どのような要素に基づき、どの程度、減額するかについては裁判官の裁量の範囲が広く、同種事件でも過失相殺の割合が異なることがあるのが現状です。
 3,取り組んだ事例から
 「金融商品取引被害とその救済の可能性」について2で述べてきましたが、取り組んだ事案から、もう少し具体的な説明をしましょう。
 (1)会社経営者・ベテラン投資家と過当取引
1. 過当取引が違法とされるためには(ア)口座支配性、(イ)過当性、(ウ)悪意性の3要件を顧客が立証しなければなりません。3要件のうち、裁判で最も問題になるのが「口座支配性」の要件で、原告が会社経営者やベテラン投資家等知識・経験があると見られる場合にはとりわけ問題になります。
2. 大阪高裁平成16年10月15判決(証券セレクト25巻137頁)
 15年間にわたり証券取引の経験のある、「会社経営者」が平成11年6月から翌12年3月迄の10ヶ月に855回の信用取引を行い、約1億数千万円の損害を被ったというケースです。これらの取引は手数料獲得のために証券会社が主導したもので、顧客には過当な取引であったとして、損害賠償を求めたものです。証券会社側は顧客の納得ずくの取引であったとしてこれを争いました。
 一審の大阪地裁は敗訴でしたが、二審の大阪高裁は、本件の投資家は会社経営者であるが、株式等に対する情報収集・分析能力はほとんどない上、本件のような回転売買では投資家が自発的・自主的な投資判断に基づき、取引を行うことは不可能であったとして、口座支配性を認め、投資家に逆転勝訴判決を言い渡しました(ただし投資家にも落ち度があるとして、7割の過失相殺がなされています)。
 このケースは、朝日新聞のコラム(平成16年12月17日夕刊「窓」〜証券会社の体質)にもその概要が取り上げられ、被告証券会社はその後、この敗訴を受け、制度を見直し、過当取引防止策として取引残高報告書に手数料累計、売買の結果生じた損益状況、現時点の評価額を記載することを決めました(平成17年1月14日朝日新聞)
3. 大阪高裁平成16年11月5日判決(判例セレクト25巻300頁)
 「株が趣味」と自負する「ベテラン投資家」が、長く付き合いのある証券外務員から誘われ、平成11年12月から翌12年8月迄の約7ヶ月間に113回の信用取引を行い、7千数百万円の損害を被ったというケースです。
 こちらのケースは一審(神戸地裁)が投資家勝訴(過失相殺7割)で、証券会社が控訴したのですが、控訴審でも一審の判断が基本的には維持されました(ただし、過失相殺8割)。
 大阪高裁は、本件のような異常な回転売買からして、本件の投資家が自主的に適正な投資判断をし、取引を行うことは、本件投資家の株式経験を考慮してもおよそ不可能であるとしています。
4. 大阪高裁平成20年8月27日判決
 昭和58〜59年頃から証券取引の経験があり、取引をしたことのある証券会社は本件取引の相手方の証券会社も含めて全部合計すると7社に及ぶという「ベテラン投資家」が、平成11年8月から翌12年5月迄の間に400回以上の取引をし、7千数百万円の損害を被ったというケースです。
 一審(神戸地裁尼崎支部)は、弁護士を依頼されないで投資家自らが訴訟されたのですが、敗訴しました。私は控訴提起後に依頼を受け、受任しました。
 大阪高裁判決は、投資家の積極的な利益志向や取引への具体的な関与を認定しつつも、本件のような大量かつ頻繁な取引は、証券取引の経験が豊富であっても、外務員の指示や助言なしに投資判断することは極めて困難であって、時には自ら指値をし、売り建て、買い建ての注文をすることがあったとしても、かなりの程度外務員の指示や助言のもとに取引を行ったと言うべきであり、その結果として、巨額の損害を被ったとして、証券会社に、善良な管理者の注意義務に違反するとして違法な過当取引を認定するとともに、指導助言義務違反を認めました(ただし過失相殺8割)。
5. 過当取引が違法とされるためには口座支配性、取引の過当性、悪意性の3つの要件を投 資家側で立証しなければならず、殊に「口座支配」性の要件の立証は容易ではないのですが、上記判例は、会社経営者やベテラン投資家でも、口座支配される場合があることを認めました。また平成20年判決は指導助言義務違反があるともしました。
 反面、それだけ知識・経験のある投資家なので、投資家側の落ち度も大きいと判断され、大幅な過失相殺が適用されています。
 しかし、そもそも過当取引が証券会社の誠実公正義務に違反する詐欺的・背任的行為であることからすれば、投資家側の落ち度をこのように過大に扱うのはバランスを欠くと考えます。 過失相殺は裁判官の価値観などに影響される部分も大きく、このような大幅な過失相殺をどうやって克服していくかは今後の課題です。
 (2)高齢者と外国投信・外国株式、EB債(仕組み債)
1. 「外国投信」は、外国の投資運用会社が設定・運用する投資信託であって、投資対象は通常、外国企業であり、国内の新聞等に投資信託自体の情報や投資対象の企業情報が掲載されないため、投資情報を入手することは一般投資家にはきわめて難しいものです。そのような外国投信を高齢者に売り付けるのは適合性原則から見て疑問があり、仮に販売自体が許されるとしても顧客が理解できるよう十分に説明する義務があると考えられます。
 証券会社が、ある外国投信を70才代の女性に販売したところ、1年あまりで10分の1以下に下落し、4000万円以上の損害を被ったというケースがあり、適合性原則違反、説明義務違反を理由に提訴しました。これに対して証券会社は、女性が資産家で証券取引の経験も長く、知識・経験・財産状態に照らしても適合性はあり、また勧誘の際、十分な説明をしたとして争いました。
 裁判所は、高齢者であることを重視し、和解を勧告し、最終的には証券会社が損害の約4割を支払うことで和解が成立しました。
2. 「外国株式」は外国の会社が発行する株式で、ニューヨーク市場やロンドン市場の主要銘柄、ナスダックの上位銘柄の株価は日経新聞に掲載されるものの、掲載されない銘柄も多く、また当該企業の市況や財務内容は新聞等ではわかりません。ここでも適合性原則や説明義務が問題になります。
 平成12年12月頃、70才代の会社経営者に対し、ある外国株式を約3000万円で売り付けたところ、翌13年9月には当該外国企業が破産し、株式が紙くずになったというケースでは、やはり適合性原則違反、説明義務違反、殊に当該企業がかなりの累積赤字を計上していたことを説明していない点が違法であるとして、損害賠償請求の裁判を神戸地裁に起こしました。
70才代で会社の仕事の実質的な部分は息子さんたちに委ねられているとはいえ、長年会社経営に関わってきた原告が、累積赤字の事実を知りながら、そのような財務内容の悪い企業の株式を購入するとは考えられません。しかし、裁判所は赤字のことを説明したという外務員の証言を採用し、投資家敗訴の判決を下しました。
 原告の方が、裁判は勝っても負けても一審限りと決めておられたことから、残念ながら、一審で確定することになりました。
3. 「EB債」(他社株式転換条項付き社債)とは、対象銘柄について償還時に予め定められた価格(行使価格)より上回れば購入資金が返還され、下回れば株式で返還されるという債券で、その性質はプットオプションの売りを組み込んだ債券であるとされています。
EB債を購入する者は、株価が計算日に一定額を下回れば、EB債の額面金額より低い株価の株式を引き受ける義務を負い、差額相当の評価損を被るリスクがあること、途中売却できないため、かかる評価損の軽減ないし回避ができないこと、クーポンは株式変動度合い等応じて設定されている結果、株式償還リスクの対価となっており、これと連動していることの理解が必要で、これらの理解ができない者はEB債購入者としての適合性を欠くというべきであり、その説明がなければ一般投資家がその商品構造に由来するリスクを踏まえて自己決定することは期待できないとされています。
 このような複雑な仕組みのEB債を当時60才代の女性に対して十分な説明をしないで売り付けたのは、適合性原則や説明義務に違反するとして、平成16年3月、神戸地裁に、損害賠償請求の裁判を提訴したところ、証拠調べを終え、最終準備書面を提出した後、裁判所から和解勧試があり、証券会社が顧客に対し、一定額を支払うこと及び不適切な説明があったことを詫びる旨の和解が平成17年12月に成立しました。
(内橋 一郎)
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