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2008.04.28 コラム一覧に戻る
先物被害訴訟のストラテジーC 難平と両建てはご法度
《平成20年3月28日 第59回先物取引被害全国研究会(山形大会)での講演から》

特定売買とは
 「浮き玉」,「新規委託者保護義務の射程範囲」に続く第三のテーマは,「特定売買論」です。
 特定売買には,直し・途転・日計・不抜け・両建があることは既にご承知のとおりです。「直し」(ナオシ)は既存建玉を仕切ってまた新たに同じ建玉を建てること,「途転」(ドテン)は既存建玉(例えば買玉)を仕切って反対のポジション(例えば売玉)を取ること,「日計」(ヒバカリ)はある建玉を建てたその日に落とすこと,「不抜」(フヌケ)は取引自体としては利益が出ているものの手数料を勘案するとマイナスになるもの,「両建て」(リョウダテ)は売りと買いを同時に建てることを言います。
 これら特定売買は手数料がよけいにかかる反面,顧客に不利であって,問題のある取引とされている取引類型とされていますが,「特定売買論」は取引全体における特定売買が占める比率が高い場合には手数料稼ぎ目的を推認しようとする考え方です。

特定売買論の果たしてきた役割
 特定売買論については平成4年8月27日の東京地裁判決がリーディングケースであるということは,皆さんご承知のとおりだと思います。原告代理人のお名前を取って,茨木判決と呼んだり,あるいは判決を書いた裁判官のお名前を取って金築判決と呼んだりもします。
 すでにご承知のとおり,この判決の第1の意義は,特定売買率,売買回転率,手数料化率を,ころがしの指標,重要なファクターだとしているということです。
 もう一つ大事なことは,「チェックシステムの対象・性格,数値基準がどうであれ,本件の両建の比率,手数料化率の持つ意義が損なわれるものではない」のだと言っている点です。しばしば商品取引員の主張として,農林省の「チェックシステム」というのは,そういうものではないのですよ,要するに,新規委託者について3カ月以内の平均を対象とした,全委託者についての平均資金率を問題にするものだという主張がよくあります。また商取ニュースは間違っていたというような記事を証拠として出してきてみたり,あるいは,農林省はこんなことを言っていないということを証拠で出してくることもありますが,やはりこの判決のいいところは,「チェックシステムの対象・性格,数値基準がどうであれ,本件の両建の比率,手数料化率の持つ意義が損なわれるものではない」のだと言っている点が重要です。
 もう一つ判例を選ぶとすれば,大阪高裁平成10年2月27日判決です。ここでもやはり,特定売買を問題にして,「個々の取引の際の個別的事情を捨象したとしても,全体的に観察して,特定取引の比率が異常に高いときは,特段の事情がない限り,手数料化率を目的としたものと推理するのが相当である」としています。手数料の損害比率の点についても,「取引途中においては,必ずしも合理的な指標とは成り得ないけれども,取引終了後に取引全体から生じた損失の要因を観察,評価するうえで,有効な指標となる」のだと言っています。この判決も,とてもいい判決だと思います。

数字より筋(ストーリー) 
 このように,特定売買論が果たしてきた役割は非常に大きく,われわれが訴訟を進めていく上で本当に強い味方です。が,その上でひとことだけ言うとすれば,「数字より筋」,ストーリーも重要だということです。半分は数字と筋の語呂合わせですが,半分は本音でもあります。やはり数字だけでは思うようには勝てない部分というのがあるのではないかと思います。
 裁判官は事実を認定して判断するわけですから,具体的な事実がどうであったかを重視します。結論にいたるまでの道行きが必要です。特定売買率が何十パーセントということで取引に問題があると判断してくれる裁判官もたくさんおられますが,そうではない方もおられます。僕らは裁判官を選ぶことはできないわけですから,やはりそういう方(裁判官)にも理解できるストーリーを描くことが必要なのだと思います。やはり具体的事実は大事だし,判決を書く上での道行きは必要だと思います。
 事案によっていろいろあるとは思いますが,やはり一つの山場になるのは,両建の前後ではないかと思います。特に,両建に至るまでの過程が大事ではないかと思います。

難平と両建てはご法度
 さて,その「両建」ですが,『会社四季報』に,東京工業品取引所や大手商品取引員4社が共同で『難平と両建はご法度』という意見広告を掲載したことがありました。
 取引所や商品取引員が,「成功しない両建」と言っているわけです。うまくいかない,成功する例はごくまれにあるけれども,それにはかなりの技術が必要なんだと言っているわけです。
 両建禁止の理由としては,手数料が倍かかるとか,あるいは,経済的に無意味であると言われていますが,さらに「外し方が難しい」という点も指摘されています。「外し方が難しい」とは,まさに,うまくいかない確率が高いという意味が含まれているわけですから,「成功しない両建」と同義であって,戦法としても不適切なわけです。
 神戸地裁平成18年3月20日判決は,この会社四季報の『難平と両建てはご法度』をかなりの分量を割いて引用した上で,「難平と両建は本質的に業者にとって手数料収入の増加をもたらすだけで顧客の損失が拡大する危険性が高い取引であるが,本件取引ではまるで取り憑かれたように,しかも異常な枚数の建玉を難平と両建を繰り返す異常なものである」と認定しています。
 
難平について
 もう一方の「難平」(ナンピン)ですが,難平は特定売買に入っていないので,特定売買マークは付きません。だけど損になっているケースが結構あると思います。10枚建てて,さらに10枚建てて,落として,300万円とか500万円の損が出ているケースがあると思いますが,そういうときに,たしかに特定売買率はゼロなんです。ゼロだけれども,よく見てみたら,難平になっているケースというのは結構多いと思います。また一度見てください。
 難平については,「難平と両建はご法度」のほかに,「難平商い損のもと」というような格言があります。また広辞苑で引くと難平には「愚か者」という意味があるらしいのです。僕はこれをすごく気に入って,準備書面に,「広辞苑は難平のことを「愚か者」だと書いている」というふうに書くのです。『会社四季報』には,難平は逆に損失を拡大させる可能性が大きいのだということが書いてあります。危険性の高い取引手法であり損失を拡大させる可能性が大きいとしていることから.難平についての説明義務であるとか,あるいは警告義務であるとかということを導くことができるのではないかと思っています。
 最近の神戸地裁判決(平成20年1月18日)でも「予想とおりに相場が反転しない限り,損害は拡大する一方であるところ,そのように相場が反転する保証はどこにもなく,著名な投資家はその危険性に着目して難平を禁じている」とされています。

鞘取り
 「鞘取り」とは,決済月の価格差,商品間の価格差,地域による価格差による買値と売値の開きを利用して差益を取る手法を言います。
 鞘取りについては,東京高裁の平成7年3月14日判決と,大阪高裁の平成18年3月17日判決がきわめて重要だと思います。
 要するに,単品の取引と比べて,ヘッジの機能もない,リスクも少ないと言われているけれども,それは特定の動きをした場合に限られるのだと。二つの取引を予測するのだから,相当の修練を要するということを,東京高裁の判決では言っています。
 大阪高裁も,これはさや取りといいますか,異限月両建について(大阪高裁判決は「両建て的取引」と呼んでいます)ですが,同趣旨のことを言っています。

まとめ
 ここで言いたいことは,特定売買論の果たしてきた役割を高く評価しつつも,そういったマクロ的なアプローチだけでなく,裁判官が理解できるようなストーリーを描くこと,すなわち個別具体的なアプローチもあわせて必要なのではないかということです。それが第3の戦略になります。

(内橋一郎)

以上

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