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2012.12.18 コラム一覧に戻る
保険法実務ノート(9)交通事故をめぐる保険〜自動車保険D
保険法実務ノート(9)
        交通事故をめぐる保険〜自動車保険D
                                              弁護士 内橋一郎
今回は自動車保険の5回目です。

Y 人身傷害補償保険
1,趣旨
 従前の自動車保険における損害補償は、事故の相手方からの損害賠償金によって賄われる仕組みになっていたため、被保険者自身に過失がある場合、保険金が減額されたが、人身傷害補償保険は、過失相殺等を考慮することなく、保険金額を限度として、保険金の支払いが受けることができる制度です。

2,保険事故
@被保険者、その父母、配偶者、子に生じた損害
A自動車等の運行に起因する急激・偶然・外来の事故等
B身体の傷害

3,被保険者及び保険金請求者の範囲
(1)被保険者
@記名被保険者
A記名被保険者の配偶者
B記名被保険者、記名被保険者の配偶者の同居の親族
C記名被保険者、記名被保険者の配偶者の別居の未婚の子
D@ないしC以外の者で、被保険自動車の正規の乗車装置または当該装置のある室内に搭乗中の者(極めて異常かつ危険な方法で自動車等に搭乗中の者を除く)。

(2)保険金請求者
@被保険者
A被保険者の法定相続人(被保険者死亡の場合)
B被保険者の配偶者
C被保険者の父母または子

4,免責事由
@戦争、暴動危険による損害、天災危険による損害、原子力による損害等
A被保険者、保険金受取人の故意・重過失によって生じた損害
B無免許、酒気帯び運転、麻薬等の影響で正常な運転ができないおそれがある場合に生じた損害
C被保険者の脳疾患、疾病、心身喪失によって生じた損害

5,補償内容
@補償内容は、「人身傷害条項損害額基準」によります(対人賠償責任保険型と同様の算出方法)。
A支払基準自体は一般的には裁判基準の方が高いとされています。
・賠償義務者がある場合で、賠償義務者との間で判決または裁判上の和解において損害額が確定し、その基準が社会通念上妥当であると認められるときは、その基準により算出した額を損害額とします。ただし訴訟費用、弁護士報酬、その他権利の保全または行使に必要な手続をするために要した費用及び遅延損害金は含みません。
B過失相殺の適用がないことが重要です。
C既払い(給付の決定を含む)の自賠責保険金、対人賠償保険金及び労災保険金、並びに賠償義務者からの既払損害賠償金等は控除されます。

6,保険代位
(1)問題の所在
 人身傷害保険条項に基づき、被保険者である交通事故の被害者が被った損害に対して保険金を支払った保険会社は、上記保険金の限度内で、これによって填補される損害に係る保険金請求権者の加害者に対する賠償請求権を代位取得し、その結果、保険会社が代位取得する限度で、保険金請求権者は請求権を失い、請求権の額が減少するため、保険会社がいかなる範囲で代位取得するかが問題となります。
(2)判例
※最判平成24年2月20日第一小法廷(判時2145−103)
・最高裁平成24年2月20日第一小法廷判決は、被害者が加害者に対して損害賠償請求をしたケースについて次のように判示した。
・被保険者である被害者に、交通事故の発生等につき、過失ある場合において、保険会社が代位取得する保険金請求者の加害者に対する損害賠償権の範囲について検討する。
・本件約款によれば、保険会社は交通事故等により被保険者が死傷した場合においては、被被検者に過失あるとこでも、その過失割合を考慮することなく算定される額の保険金を支払うものとされているのであって、上記保険金は、被害者が被る損害に対して支払われる傷害保険金として、被害者が被る実損その過失の有無、割合にかかわらず填補する趣旨・目的の下で支払われるものと解される。上記保険金が支払われる趣旨・目的に照らすと、本件代位条項にいう「保険金請求権利者の権利を害さない範囲」との文言は、保険金請求者が、被保険者である被害者の過失の有無、割合にかかわらず、上記保険金の支払によって民法上認められる過失相殺前の損害額(裁判基準損害額)を確保することができるよう解することが合理的である。
・そうすると、上記保険金を支払った保険会社は、保険金請求者に裁判基準損害額に相当する額が確保されるように、上記保険金の額と被害者の加害者に対する過失相殺後の損害賠償請求権の合計額が裁判基準額を上回る場合に限り、その上回る部分に相当する額の範囲で保険金請求権者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得すると解するのが相当である。
・宮川補足意見は、損害賠償金の受領が人身傷害補償保険金の請求に先行した場合に関して、本件約款の人身傷害条項は、賠償義務者から既に取得した損害賠償金の額等がある場合は保険金の額はそれらの合計を差し引いた額とすると定めているが、これを文字どおり解釈して適用すると、一般に人身傷害条項の基準は裁判基準を下回っているので、先に保険金を受領した場合と比較すると不利となり、明らかに不合理であるから、上記定めを限定解釈し、差し引くことができる金額は裁判基準損害額を確保するという「保険金請求権利者を害さない範囲」のものであるとした。
※最判平成24年5月29日第三小法廷(判時2155−109)
・最高裁平成24年5月29日第三小法廷判決は、被害者の損害賠償請求権を代位取得した保険会社が加害者に対し請求をしたケースにつき、第一小法廷と同じく、裁判基準損害説に立つ旨判断をしている。
・ただし、田原補足意見は、損害賠償金の受領が人身傷害補償保険金の請求に先行した場合に関し、賠償義務者から既に取得した損害賠償金の額等がある場合は保険金の額はそれらの合計を差し引いた額とする約款につき、保険金の支払いと加害者からの損害賠償金の支払いの先後により被害者が受領できる金額が異なることは好ましいことではないとしながらも、現行の約款の見直しを求めるに止まり、最判平成24年2月20日第一小法廷の宮川補足意見の限定解釈論と異なった見解を述べる。
※大阪高判平成24年6月7日(判時2156−126)
・大阪高判平成24年6月7日は、損害賠償金の受領が先行し、その後、人身傷害補償保険金の請求を保険者にしたケースについて、かかる場合について、約款9条は「保険会社が保険金を支払うべき損害の額は人傷損害額算定基準に従い算出した金額の合計額」と明記し、11条は「保険金の額は上記9条の額から自賠責保険金支払額、任意保険支払額、賠償金支払額、労災保険給付額等の合計額を差し引いた額」と明記しており、「保険金請求者の権利を害さない範囲」とは規定されていないこと、賠償金支払が先行した場合と人傷保険金の支払が先行した場合とで被害者が受け取るべき総金額を同一にすることが望ましいとしつつも、どちらを先に請求するかはあくまで被害者に選択に委ねられていること等を理由に、人身傷害補償基準により保険金額を算定すべきとしました。
                                                   

以上

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